理想的な鏡筒トラスとは、たわまず、剛性が高く、組み立てが簡単で、軽量なものだと私は考えています。 そこでここでは自作60cmドブソニアン計画の構成要素のうち、鏡筒トラスについて検討します。

トラス棒の本数 <設計変更>


結論(設計変更):トラス棒は8本とする。

(過去の結論:自作60cmドブソニアン計画ではトラス棒は6本とし、組み立て時間を短縮する。)


トラス棒はトップリングを支える必要十分な本数があれば良いはずです。 そのためトラス棒の本数は原理的には6本で必要十分です。 8本とすると組み立て時間が余計に掛かってしまうことになります。 そこで自作60cmドブソニアン計画では、トラス棒の本数は6本とすることにします。

設計変更

当初トラス棒の本数は6本とし、また6本ジャッキの原理でトラスの視点を一致させることで高い剛性を狙いましたが、実際には剛性は低く、振動(固有振動数: 2.6~3Hz)や光軸ズレ(最大8mmのズレ)が生じて全くダメでした。 そこでAurora Precision製のトラス金具を購入し、8本トラスに設計変更しました。 設計変更後は固有振動数は5.1Hzに減少し、また光軸ズレも最大で1mm程度に収まりました。 トラス棒をさらに太くして、これらの数字はさらに改善しました。

6本ジャッキ <設計変更>


結論(設計変更):トラス棒は8本とし、トップケージの位置と傾きは調整しない。

(過去の結論:自作60cmドブソニアン計画ではトラス棒は6本とし、6本ジャッキの原理でトップケージの位置と傾きを調整する。)


トラス棒を6本とすることで6本ジャッキ(スチュワートプラットフォーム)の原理でトップケージの位置と傾きを任意に調整できると考えます。 スチュワートプラットフォームとは6つのアクチューエーターで一つの平面を支える機構で、x, y, z, θx, θy, θz の6つの自由度があり、各アクチュエーターの長さを調整することで支えている平面を任意の位置・角度にすることが出来ます。 副鏡ユニットや主焦点ユニットの位置・角度調整のため、近年建設される大型望遠鏡にほぼ例外なく採用されています。

自作60cmドブソニアン計画の場合、これと同様に、6本ジャッキの原理でトップケージの位置と傾きを調整できるようにしたいと考えます。

設計変更

原理的には6本ジャッキの原理で調整すればトップケージの位置と傾きは調整できるはずなのですが、実際にはうまくいきませんでした。 これはおそらく主鏡セルやトップケージの剛性が低く、無視できない量のたわみがあったため、位置や傾きはアクチュエーター(トラス棒)の長さだけでなく、かける力によっても変わったため、一意に調整できなかったものと思われます。

そこでシンプルに市販のトラス金具を使って8本トラスとして、トップケージの位置と傾きは調整しない(工作精度で決まる位置・傾きを基準に、これに主鏡光軸を合わせる)ことにしました。 結果的にこれで十分でした。

またこれは6本ジャッキとは関係ないのですが、私の製作したトラス金具では6本トラスだと組み立て中にトラス棒が開いてしまい、組み立てが大変でした。 トラスの本数を減らして組み立て時間の短縮を狙いましたが、6本トラスとしたことでかえって組み立てに時間が掛かってしまい、本末転倒でした。

トラス棒の重量


結論:トラス棒は必要な強度を確保しつつその重量はできるだけ軽くなるように設計する。


ドブソニアン望遠鏡の場合、鏡筒トラスの重心位置は一般に高度軸よりもトップケージ側に位置することになります。 そのためトラス棒の重量が大きいとそれだけバランスをとるためミラーボックス側を重くするか、トップケージ側を軽くする必要があります。 よってトラス棒としては必要な強度(たわまず・剛性が高い)があれば軽量であれば軽量であるほど優れていると考えられます。 自作60cmドブソニアン計画でもこの考えに従って、トラス棒の重量は出来るだけ軽くなるよう設計したいと考えます。 具体的には本数が少なく、長さが短く、直径が小さく、軽量な材質で出来たトラス棒を使用したいと考えます。 実際には容易に入手可能でかつ安価なもので製作することになると思います。 いずれにせよ自作60cmドブソニアン計画ではトラス棒は必要な強度を確保しつつ出来るだけ軽量になるように設計したいと考えます。

トラス棒の長さ


結論:トラス棒の長さは最小限とする。


鏡筒トラスはトップケージとミラーボックスを接続する鏡筒の構造ですが、その長さは出来るだけ短いほうが良いと考えます。 理由は鏡筒のたわみを考えたとき、鏡筒が長ければ長いほどたわみ量は大きくなり、光軸ズレの原因となる可能性があるからです。 またトラス棒の長さを最小限とすれば収納時や運搬時にコンパクトになります。 これは結構重要なことで、自作40cmドブソニアンでもトラス棒が長くて邪魔で、車載時に困りました。

そこで自作60cmドブソニアン計画ではトラス棒の長さは出来るだけ短く最小限の長さとなるよう設計することにします。

トラス棒の直径 <設計変更>


結論(設計変更):トラス棒の直径は1.5 inchとする。

(過去の結論:自作60cmドブソニアン計画ではトラス棒の直径は1.0 inchとする。)


自作40cmドブソニアンの場合はトラス棒の直径は19 mmのアルミであったが特に問題はありまんでした。 そのため自作60cmドブソニアンの場合もトラス棒はあまり太くなくても望遠鏡の剛性には影響しないと考えられます。 直径1.0 inchのアルミパイプであれば、市内(島内)のホームセンターで容易に入手が可能なようです。 そこで自作60cmドブソニアン計画ではトラス棒の直径は1.0 inchとすることにしました。

設計変更

当初トラス棒の直径は1.0 inchとしましたが、より高い剛性を目指して直径1.5 inchのアルミパイプに交換することにしました。 直径1.5 inchのアルミパイプは Online Metals から購入しました(送料はそれなりにかかりました。)

トラス棒の直径を大きくしてもあまり変化はありませんでしたが、直径1.0 inchの8本トラスで5.1 Hzだった固有振動数は直径1.5 inchでは6 Hzとなり、確かに剛性は上がったようです。

トラス金具 <設計変更>


結論(設計変更):Aurora Precision 製のトラス金具を使用する。

(過去の結論:自作60cmドブソニアン計画ではトラス金具も自作する。)


自作60cmドブソニアン計画のトラス棒は6本で、直接主鏡セルに接続する構造とするため、これに合わせてトラス金具を製作する必要があります。そこで具体的に、6本ジャッキの原理で各トラス棒の長さが調整できるように、また先端はロッドエンドベアリングを使用して自由な角度で固定できるように設計します。

設計変更

6本トラスだと、剛性が低く、たわみが大きく、調整が困難で、組み立て時間が掛かり、メリットが無いことが分かりました。 そこで Aurora Precision で販売しているトラス金具 "Cage Truss Clamps", "Truss Brackets" を使うことにしました。 頑張れば自作も出来そうな構造ですが、トラス棒側の金具とトップケージ側の金具との回転を止める位置決めピンがよく出来ていて、これを使用するのが近道だと考えました。

またトラス棒は工作の都合から主鏡セルではなくミラーボックスに接続する構造としました。 これに合わせてミラーボックスも剛性のある構造としましたが、これらが結果的にうまく作用したからか、剛性が大幅に向上し、固有振動数や光軸ズレが大幅に改善しました。

セルリエトラス


結論: 自作60cmドブソニアン計画ではセルリエトラスは採用しない。


セルリエトラスとは、望遠鏡の構造を副鏡支持機構、中央枠体、主鏡支持機構の3部分から構成し、副鏡支持機構と中央枠体を接続するトラス、中央枠体と主鏡支持機構を接続するトラスの剛性を調整して、望遠鏡を傾けても両方が同じたわみ量となって光軸がずれないように工夫されたトラスのことを指します。 ここで自作60cmドブソニアン計画の場合もできれば望遠鏡を傾けても光軸がずれないようにしたいと考えますが、セルリエトラスの構造となっているのは研究用の大型望遠鏡がほとんどで、Obsession Telescope の UC シリーズ、Habble Optics のような「ウルトラライトタイプ」のドブソニアンでは直接トップケージとミラーボックスがトラス棒で接続され、セルリエトラスの構造になっていません。

自作60cmドブソニアン計画はできるだけ構造をシンプルにして小型・軽量になることを目指しています(そうしないと車に載せられない!)。 そこでトラスについては、セルリエトラスの構造はあえて採用しないことにします。

追記

当初の6本トラスの時には剛性が低く、固有振動数が小さく、光軸ズレも大きかったのでセルリエトラスに作り替えようとも考えましたが、トラス棒を6本から8本に変え、Aurora Precision 製のトラス金具を使用し、またトラス棒の直径も1.0 inchから1.5 inchに大きくしたところ、剛性、固有振動数、光軸ズレは大幅に改善し、特に問題は感じなくなりました。 よってセルリエトラスは採用しませんでしたが、当初の期待・想定通り、特に問題は生じていません。

シュラウド


結論: 自作60cmドブソニアン計画ではシュラウド(トラスカバー)は使用しない。


自作40cmドブソニアンから得られた経験 に書いたように、自作40cmドブソニアンではトラス部全体を覆う遮光布(シュラウド・トラスカバー)を用意して迷光対策を考えました。 しかし市街地での観望会以外では必要性を感じることはなく、逆にシュラウドを取り付けることで強風で望遠鏡が勝手に動いてしまい危険と感じました。

そこで自作60cmドブソニアン計画では鏡筒トラス部分を覆うシュラウド(トラスカバー)は使用せず、迷光対策はミラーボックスやトップケージといった他の構成要素で行う設計とすることにしたいと思います。

追記

自作60cmドブソニアンではシュラウド(トラスカバー)は使わない前提でいましたが、約1年間使ってみて、特にエリダヌス座付近の銀河等、南の低空の天体を見るときにコントラストがイマイチ悪いように感じることがありました。 フィルターを使ったりアイピースを換えたり色々試しましたが、思ったようなコントラストは得られませんでした。 そこで当初設計にはありませんでしたが、シュラウドを製作し、鏡筒トラスを覆ってみました。

そして実際にシュラウドを使用して鏡筒トラスを覆ってみましたが、コントラストはほとんど改善せず、その効果はほとんど感じませんでした。 逆に取り付けが面倒で、さらに強風にあおられて望遠鏡が小刻みに振動してしまうこともわかり、メリットよりもデメリットが多いと感じました。 そのため当初設計通り、シュラウドは使用せず運用することにしました。

追記の追記

とはいえやはり観望会など街灯が近くにあるような場所での星見にはシュラウドは必要と感じ、2019年に再製作することにしました。

シュラウドは暗い観望地では不要でしたが、明るい観望地ではあった方が良いようです。 確かにシュラウドの使用によって市街地でも迷光が防げて視野内のコントラストをそこそこ高く保つことができ、気持ちよく観望できるようです。