ここではバロードレーザーで主鏡の傾きを調整する手順について考察します。

バロードレーザーとは?

バロードレーザーとは 2002年(2003年?)に Nils Olof Carlin 氏によって考案された光軸調整の手法で、レーザーコリメーターの前にバローレンズ(凹レンズ)を用いる手法です。 バローレンズを用いる事でレーザー光を拡散光として、レーザースポットそのものではなく拡散したレーザー光による主鏡センターマークの影を利用するのがこの手法の特徴です。

Howie Glatter tuBlug(左)とHowie Glatter 635nm high brightness red laser 2
バロードレーザーの例:Howie Glatter tuBlug(右は一緒に使用するレーザーコリメーター)

何を、どこに合わせるのか?

バロードレーザーでは、バロードレーザーとレーザーコリメーターを望遠鏡の接眼部に取り付けて使用します。 射出したレーザー光はバロードレーザーによって拡散光となり、拡散したレーザー光は 副鏡 → 主鏡 → 副鏡 の順に反射し、バロードレーザーの射出部に戻ってきます。この戻ってきた「拡散レーザー光による主鏡センターマークの影」と「レーザー射出部」とが一致するよう、主鏡の傾きを調整します。 以下の写真のように、拡散レーザー光による主鏡センターマークの影がバロードレーザーに投影されるので、これをレーザー射出部(写真では黒い穴)と一致するよう主鏡の傾きを調整することになります。

バロードレーザーの写真

計算結果

以下に計算結果を示します。

計算結果

よって主鏡の傾き誤差 α、副鏡の傾き誤差 β、接眼部の傾き誤差 γ がある場合、バロードレーザーを使用すると「拡散レーザー光による主鏡センターマークの影」は

x = 2f α + 4b β + 0 γ

の位置に投影されることがわかりました。 これを「レーザー射出部

x = 0

と一致する(重なる)よう、主鏡の傾きを調整することになります。