
南天を代表する天体、イータカリーナ星雲。 まず目につくのが金色にオレンジ色を混ぜたような色に輝くりゅうこつ座イータ星 (η Car)。 このイータ星を含む北側の逆三角形の星雲が最も明るくはっきり見える。 次にイータ星のすぐ北西にぽっかりと黒く抜けた暗黒帯が見える。 これが通称キーホール。
これらを含む北側の逆三角形の星雲は南東から北西にほぼ一直線上にすっと星雲と暗黒帯との境界がはっきりと連なる。 星雲は一直線上に続いていくけれど所々に深い谷が星雲に切れ込んでいる。 海に突き出した断崖絶壁に浸食で深い谷が刻まれたような印象。 淡い星雲を辿っていくと、断崖絶壁からさらに北西に広がっているのが分かる。 こちらは断崖絶壁と直交する方向(北東-南西)に、何層にも分かれてシェル状に淡く広がっていく。
イータ星を高倍率で見ると星の東西方向に8の字形の星雲(人形星雲、ホムンクルス)があるが、この倍率だとよほど注意深く見ないと見えてこない (このスケッチでも描けていません)。 540倍で見てもまだ小さく形をしっかり見るにはもっと倍率が欲しいところ。 8の字形の星雲がイータ星と同じ色に輝いて、とても美しい。
イータ星の北東の領域を見ると、こちらは北西に比べると薄い。 一方で淡い領域は同じぐらいの大きさに広がっていて、こちらは南北方向に何層にも分かれてシェル状に広がっている。
次に目立つ星雲が南西側の星雲、これは極めて大きくて完全にEthos21mm、100倍、1度の視野をはみ出して広がる。 北側の星雲に比べると暗いが、それでも複雑なガスの流れが十分に分かるぐらいには明るい。 こちらもいくつか暗黒帯が筋のように入って見えて、それが良いアクセントになっている。 ガスは幾筋にも分かれ、再び繋がり、とても複雑に絡みながら大きく広がる。
視野のほぼ真西に勾玉のような形の明るい領域が目立って見える。 北の丸い領域から、南西にすっと伸びて見える。 これとほぼ並行するように、さらに外側に平行した星雲の流れが見える。
南はすっと伸びた淡いガスの流れが見える。 この流れはつかみどころがなく、淡いが比較的幅が広いのだけど、確かに存在して見えている。 伸びた先で最後に明るい星の方向に150度ぐらいの角度で方向転換して、淡く視野背景に溶け込んでいく。
イータカリーナの南東側は最も星雲が少ない領域のようだ。 2つの明るい星の周辺が最も明るい領域で、それ以外は中心からシェル状に淡い構造が幾重か見える。 広がりはあまり大きくなく、南東方向はすっとガスのない領域になり、気がつくと暗い星がちりばめられた、普通の天の川の中の領域となっていく。
暗黒帯の切れ込みも面白い。 北側の明るい星雲の断崖絶壁と南西側の星雲との間の暗黒帯は並行ではなく、くさび状に中心に突き刺さっていく。 北と南西の星雲で淡いガスで僅かに接続する領域も見られるが、それ以外は本当に漆黒。 中心部は周囲の星雲に囲まれて大きく三日月状に暗い領域が見える。 ここも漆黒。 この三日月状の暗黒帯の東西に微恒星が群れて、まるで散開星団のよう。 恒星と重なりながら、また恒星と恒星の間を縫って、星雲、暗黒帯が伸びていく。
視野全体が天の川の中でとにかく微恒星が多い。 無限にも思える恒星の中から特徴的な配列のもの、星雲との位置関係を記す上で重要なものを選んで慎重にプロット。 暗い星がたくさん重なっているのもイータカリーナ星雲の特徴。 M42オリオン大星雲も、M8干潟星雲も、バラ星雲も、さすがに微恒星はここまで多くない。 微恒星だけでなく明るい恒星も重なって、良いアクセントになる。 ただし意外とイータ星を中心とする直径1度の範囲は他に明るい恒星がなく、周囲の明るい恒星は望遠鏡の視野を振ったときに見えてくる。
スケッチは4/13に3時間15分、4/14に3時間50分、4/15に3時間15分の合計10時間20分かけて描いた。 ここまで時間をかけて描いた天体スケッチはイータカリーナが始めてで、たぶん最初で最後の経験になると思う。 じっくりと覗き込んで、恒星の位置を慎重に確認して、記録していった。 今回はある程度恒星をプロットした段階で星雲も重ねて描いていった。 そうしないと、どこを見ているのかさっぱり分からなくなりそうに感じた。
イータカリーナ、確かにM42オリオン大星雲の2倍以上の大きさがあることを実感。 とにかく大きくて明るい。M42オリオン大星雲のトラペジウムのある領域 (ハーシェル領域) を大きくしたのが北側の星雲に相当するように思う。 今回は倍率100倍、見かけ視野100度で約2度×2度の領域を描いたけどもっと高倍率で部分部分の詳細を見るのが面白いかもしれない。 細かいところを見るには100倍だとまだまだ倍率が足りない。 例えばキーホール周辺。 暗黒帯のうねった構造をしっかり見て記録するにはもっと倍率が欲しい。 例えば北西の断崖絶壁。暗黒帯が断崖に切り込むところはもっと倍率が必要。
一方で低倍率で見ることで大きく淡いガスの広がりが見えてくるもの面白いと感じた。 天体写真と比較すると、真っ赤に写っている構造はHα線656nmのためかほとんど何も見えないことが分かる。 一方で天体写真で白っぽく見えている領域は眼視でもしっかり見えている。 暗黒帯は結構天体写真と眼視とで形が違っている。
10時間20分かけてなんとか描けたと思ったけれど、オーストラリア遠征の最終日に最後にイータカリーナを見て、ちっともスケッチで表現できていないと思い知った。 とにかく明るくて、大きくて、微恒星が重なっていて、それなのにどこまでも細かく構造が見えていて、そんな星雲が視野いっぱいに視野をはみ出して広がっていて、本当に美しい光景だった。この感動を描くにはまだまだスケッチの経験が足りないと思った。 機会があれば、また描いてみたい。
| NGC3372 | りゅうこつ座 | 星雲 | 3等 | 120' | 1万光年 |
| スケッチ終了日時 | 2026年4月13日22時15分~25時30分、 2026年4月14日22時30分~26時20分、 2026年4月15日22時00分~25時15分 (合計10時間20分) |
| 観測場所 | オーストラリアNSW州クーナバラブラン ミルロイ天文台 (標高540m) |
| 使用機材 | GINJI-400DXII (40cmドブソニアン) + SIPS + Ethos 21mm (100倍、1.0度), スケッチの範囲は約2.0度×2.0度 |