M8干潟星雲のスケッチ

大きく広がる散光星雲。 干潟星雲という呼び方が一般的だけど、英語では Lagoon Nebula で、見た目にも珊瑚礁のリーフに囲まれた水深の浅い水域のような印象に思う。 星雲の中央、スケッチでは中央やや右側に明るい2つの恒星が見え、その辺りの星雲が一番明るく複雑な構造をしている。 そしてこのあたりを中心に、星雲は幾重にも重なるように広がり、星雲の流れを追っていくとこの明るい領域から徐々に周囲にシェル状に広がっていく。 中央の暗黒帯は星雲を刻むように、いくつも複雑に並ぶ。

明るい星雲の東側(スケッチでは中央やや左)には比較的明るい星からなる星団が見られ、これにはNGC6530というカタログ番号がついている。 スケッチでは星の明るさをうまく表現できていないが、比較的明るい星からなる星団で三角形に整列した配列で、また淡いが散光星雲とも重なって非常に美しいと感じた。

淡い星雲はかなり大きく広がる。 特に南東方向は淡いが複雑な網状の構造で、ラグーン中の浅瀬と深いところが入り交じるような印象に感じた。 星雲の北東~北西の領域はシェル状ではっきりと「星雲はここまで」といった感じに、縁取りされているように感じた。 このあたりがまさに珊瑚礁のリーフのような感じと思った。 一方で南西はストンと急に暗くなり、星雲が途切れる。 大きく広がるが、一様ではなく、それぞれが個性的で面白い。

星雲はノーフィルターでもよく見えたが少しコントラストを上げた方が面白いと考え CLSフィルター を使用した。 CLSを使用することで星雲の構造・流れが強調され、大変面白い眺めとなった。

なお当初そんなに難しいスケッチでもないだろうと考えていたが、見れば見るほど、描けば描くほど、構造がどこまでも見えてきて大変なスケッチだったことに気が付いた。 M8干潟星雲はぱっと見ただけでもそこそこよく見えるのでこれまで本気で見てこなかったということなのか、スケッチの前と後とで印象が大きく変わった。 結局1夜・4時間15分では描き切ることができず2夜目にもう1時間30分かけて星をプロットしたり星雲の仕上げをしたりして、合計で5時間45分かけてなんとか描き切ることになった。 とても難しいスケッチだったけれど、見えたものは概ね描き切ることができて大変満足いくものが得られたと思う。

天体のデータ
M8 (NGC6523)いて座散光星雲4.5等45'x30'4300光年
NGC6530いて座散開星団4.6等15'4300光年
スケッチデータ
スケッチ日時2023年6月22日23時15分~23時45分、24時30分~28時15分
2023年6月23日24時30分~26時00分(合計5時間45分)
観測場所ハワイ島 マウナロア山 スイッチバックから1.4マイル (海抜2,670m)
使用機材自作60cmドブソニアン + SvBony CLSフィルター + SIPS + Morpheus 12.5mm
(180倍, 0.43度)、スケッチ範囲は約0.7度×0.9度

M8 干潟星雲 (NGC6523)

M8干潟星雲のスケッチ

夏を代表する大型の散光星雲。 西側が主にガス、東側が散開星団のような感じで、どこまでも淡い星雲が広がっているように見える。 天体写真ではさらに西の領域にも明るく星雲が写るのに、スケッチではそれがほとんど見えなかった。

天体のデータ
M8 (NGC6523)いて座散光星雲4.5等45'x30'4300光年
スケッチデータ
スケッチ終了日時2007年6月12日25時50分
観測場所東北大学天文同好会安達観測所
使用機材自作40cmドブソニアン+パラコア+Nagler Type5 31mm (67倍, 1.2度)