Andromeda's Parachuteのスケッチ
Andromeda's Parachuteのスケッチ

Andromeda's Parachute(アンドロメダパラシュート)とは z=2.377 の重力レンズ効果を受けたクエーサーのこと。 2017年に Berghea らが口径1.8mの Pan-STARRS 望遠鏡のデータを使って発見し、Rubin らによる口径10mの Keck望遠鏡 を使った分光フォローアップ観測から赤方偏移 z=2.377 と判明したようだ。 z>2にも関わらず、可視での等級が15等台と非常に明るく、恐らくアマチュアが見ることのできる最も遠方の天体と思われる (原理的にはz~3.5ぐらいまではギリギリ見える)。 宇宙論パラメーターにも依るが、概ね距離は110億光年ぐらい離れた天体になる。 110億年宇宙を旅してきた光子(フォトン)が自分の目の網膜で神経信号に変換されて「見えた」と思うとなんだか不思議な気持ちになる。

ほとんど恒星状に見え、200倍だと低倍率のためか、有るか無いかわからないぐらいの淡さ。 それ以上の倍率だと恒星のように見えるが、今度は導入が大変。 近くの星の配列を頼りに、可能な限り高倍率(920倍)で導入・追尾してスケッチした。 恒星状といえば恒星状なのだが、少しベールに包まれたような感じで、近くの16.3等の恒星とは明るさは同じぐらいだが違うように感じた。 そらし目で見るとベール+恒星状の天体も、チカッチカッとコアというか恒星のようなピークの鋭い塊が見えるような感じがする。 淡いベールは円ではなく楕円で、引き延ばされたような感じに見えた。

重力レンズ効果を受けてクエーサーは全部で4つ見えているらしい。 Berghea et al. (2017) によると、明るさはそれぞれ15.6等、15.7等、16.4等、18.1等で、このうち明るい3つが一列に並び、最も暗い1つが別の場所に見えるようだ。 3つの明るさを合計すると14.7等となり、確かに十分に見える明るさ。 明るい3つの像は2.5秒角程度の範囲に一列に並んでいるので、これも十分に分離して見えてもおかしくない。 ただし890倍で見てもはっきりと分離しているようには見えず、しかし楕円状に少し引き延ばされているようには見えた。

天体のデータ
Andromeda's Parachuteアンドロメダ座重力レンズ効果を受けたクエーサー14.7等2.5"z=2.377
スケッチデータ
スケッチ終了日時2020年11月7日22時05分
観測場所ハワイ島 マウナロア山 観測所前の駐車場 (海抜3,400m)
使用機材自作60cmドブソニアン + SIPS + Abbe Barlow + XW5 (890倍、0.08度)