ここでは自作60cmドブソニアンの概念設計を行います。自作60cmドブソニアン計画の目的で示した計画の目的を実現するため、自作40cmドブソニアンの運用から得られた経験を踏まえ、様々な要素について検討します。

光学系


結論:口径 60 cm 程度を念頭に、口径、F値、主鏡重量、完成時のサイズ、価格等を総合して決定する。概念設計の時点では口径は決められない。(自作40cmドブソニアンの時も当初 38 cm で設計していたが光学系の見積もり後に口径 40 cm に変更した経緯があったため注文するまでは口径を固定しないこととした。)


F値と焦点距離


結論:口径 60 cm 程度を念頭に、焦点距離が約 2 m となるようにする。 22 inch F3.6、 24 inch F3.3、 26 inch F3.1、28 inch F2.9 で検討を進める。


2019年4月追記

参考のため、 2014年9月に Lockwood Custom Optics に問い合わせたときの価格を記します。 これまで伏せてきましたが、もう十分に時間が経ったこと、2019年現在はウェブページにも価格が記載されるようになったことから当時の価格を列記します。

なおこの価格は Optical Mechanics, Inc. の Enhanced Aluminum コーティングと米国イリノイ州からハワイ島までの送料を含んだ見積もりでした。

自家用車での輸送


結論:口径 60 cm クラスのドブソニアンだとフォレスター、クロストレックでは2人乗車状態での積載は十分に可能だが、5人乗車状態は不可能となる。


自作60cmドブソニアン計画で製作する望遠鏡は自分の車で空の暗い場所まで運べることを前提とします。 そのため自家用車 Subaru Forester 2.5i Premium (北米仕様、CVT) または Subaru XV Crosstrek 2.0i Premium (北米仕様、5速MT) で運べることが条件となります。

荷室の寸法を実測しました。

Subaru Forester 2.5i Premiumの荷室寸法
荷室フロア幅 (ホイールハウス幅) 42 inch = 106 cm
荷室長 (下部、5名乗車時) 31 inch = 78 cm
荷室長 (上部、5名乗車時) 23 inch = 58 cm
荷室長 (リアシート格納時) 69 inch = 175 cm
荷室高 (最も低いところ) 30 inch = 76 cm
Subaru XV Crostrek 2.0i Premium の荷室寸法
荷室フロア幅 (ホイールハウス幅) 42 inch = 106 cm
荷室長 (下部、5名乗車時) 31 inch = 78 cm
荷室長 (上部、5名乗車時) 23 inch = 58 cm
荷室長 (リアシート格納時) 62 inch = 157 cm
荷室高 (最も低いところ)
荷室深さ 3 inch = 8 cm
トノカバー高 15 inch = 38 cm

実測の結果から口径 60 cm クラスではフォレスター、クロストレック共に5人乗車状態では運べないことが分かりました。

保管場所


結論:リビングで保管する。(それ以外の場所では保管できない)


自作40cmドブソニアンは車の中に乗せっぱなしで保管していましたが、米国は治安が悪く、望遠鏡をはじめ、車の中に物を置きっ放しにして保管することは一般的ではありません(車載物が盗まれることよりも車が破壊されることの方が問題)。 そこで自作60cmドブソニアン計画で製作する望遠鏡は自宅に運び込んで保管する必要があります。 自宅の入り口や狭いところの寸法が望遠鏡の大きさを決める物理的な制約となります。

自宅の入り口や狭いところの最大幅
玄関 (1F) 29 inch = 73 cm
庭の引き戸 53 inch = 135 cm
廊下の最小幅 29 inch = 73 cm
書斎入り口 29 inch = 73 cm

玄関や廊下、書斎入り口が 29 inch = 73 cm と狭く、殆どの場所へ搬入できないことが判明しました。 幸いリビングには庭(ラナイ)へのアクセスのための間口の広い引き戸 53 inch = 135 cm があるため、ここから搬入が可能です。 自作60cmドブソニアン計画で製作する望遠鏡は、リビングにしか搬入できないことから、リビングで保管するしかないことが分かりました。

自作か市販品の購入か


結論:自作することを念頭に、必要な部品は各社から調達し、完成品ドブより安く、高性能になるように製作する。


赤道儀台は必要か


結論:自作60cmドブソニアン計画の目的である高倍率観望のためには赤道儀台が必要になるかもしれない。 望遠鏡の完成後に必要性を検討する。 赤道儀台が必要となった場合でも少ない工数で対応出来るよう構造を工夫して設計する。 ただし自作40cmドブの経験から、赤道儀台がなくても追尾はあまり問題にはならないように思われる。


ドブソニアンは経緯台のため、長時間天体を観察する場合やスケッチをとる場合には手動で天体を追尾する必要があります。 自作40cmドブソニアンでは約 200 倍で観察・スケッチしていますが、天体追尾はそんなに大変に感じたことはありません。 強いて言えば、観望会で人に見せるときに自動追尾できればと思う程度です。

しかし自作60cmドブソニアン計画ではより高倍率、具体的には 300 倍前後で観察・スケッチしたいと考えています。 倍率が約 1.5 倍になると視野の広さ(実視野)は約 0.66 倍になり、視野内の天体の滞在時間も 0.66 倍となってしまいます。 そのため自作60cmドブソニアンでの快適な観察・スケッチのためには天体の自動追尾が必要になる可能性があります。

ドブソニアンで天体を自動追尾するためには2通り考えられます。 1つ目は高度軸・方位軸それぞれをモーター制御にして2軸で天体を追尾する方法で、もう1つは高度軸・方位軸の他に赤経軸に相当する第3の軸を追加して第3の軸を恒星時駆動(一定速度で回転)させることで天体を追尾する方法です。 ただし、私は望遠鏡を自在に振り回し、ファインダーを頼りに近くの恒星から目標の天体を導入することが眼視の醍醐味だと思っています。 そのため高度軸・方位軸にモーターを取り付けて制御する方法は私にとっては面白くありません。 そのため本計画では、後者の第3の軸を追加する方法で天体の自動追尾を実現したいと考えます。

第3の軸を追加する方法は Equatorial Platform (赤道儀台) または Poncet Mount (ポンセマウント、またはポンセット) として知られています。 私のウェブサイトではこれらを総称して「赤道儀台」と呼ぶことにします。 完成品は Equatorial PlatformsCrossbow Equatorial Platform 等、数社から販売されているようですが、自作も数多く見かけます。

本計画では望遠鏡の完成後に赤道儀台の必要性を検討し、必要であれば追加製作することにしたいと考えます。 できれば追加工数が増えないよう、自作60cmドブソニアン計画は赤道儀台に対応した構造で設計したいと考えます。

2015年10月31日追記

最近 480倍 (自作40cmドブ + SIPS + EiC-16 + NAV-7SW) で観望・スケッチを楽しむことが多くなりました。 この倍率で観望する場合、追尾が問題になることよりも光軸が問題になることが判りました。 そこで自作60cmドブソニアン計画で製作する望遠鏡の場合も、天体の追尾は高倍率になってもあまり問題にならず、赤道儀台がなくても快適に観望・スケッチできるように思います。

2019年4月21日追記

さすがに 920倍 (自作60cmドブ + SIPS + Zeiss Abbe Barlow + XW5) では追尾が大変でしたが、なんとかスケッチすることは出来ることが判りました(C22 青い雪だるま (NGC7662))。 ただし背景が暗すぎて視野環がよくわからなかったり、倍率なりに星像がぼけたりはしますが・・・ というわけで少なくとも赤道儀台やトラッキングが無くてもスムースに動く架台であれば900倍程度でも観望・スケッチできるように思います。