ここでは自作60cmドブソニアン計画の構成要素のうちトップケージ(トップリング)について検討します。 トップケージは望遠鏡の鏡筒の筒先部分で、副鏡、副鏡セル、副鏡スパイダー、接眼部、ファインダーを取り付けます。 トップケージは鏡筒トラスで主鏡セル(ミラーボックス)に接続します。
結論: 自作60cmドブソニアン計画では「トップケージ」式を採用する。
2.4. トップリング に書いたように、自作40cmドブソニアンではミラーボックスに格納できることを意図してトップリングを採用しました。 トップリングで特に問題を感じたことはありませんでしたが自作60cmドブソニアン計画では改めてトップリングとトップケージを比較検討し、どちらを用いるか決めることにします。
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トップリングは1枚のリング状のものを用意し、これに副鏡スパイダーや接眼部を取り付けるような構造を指します。 トップリングの材質は鉄角パイプ、アルミL字アングル、合板、自転車のリムといったものが使われているようです。 具体的には以下の図のような形・構成となります。 上にリングとするか下にリングとするかで2通りの形が考えられます。
自作40cmドブソニアン では上図左側のようなトップリングを採用しました。 また市販品の Obsession Telescopes のUCシリーズ、Hubble Optics のUltra Lightシリーズといったドブソニアン上図右の形のトップリング式を採用しています。
トップリング式は軽量にできるのが最大の利点と思います。 部品点数が少なく、無駄のない形と言えます。 一方で副鏡がむき出しで収納時に何らかの保護を考える必要があること、また実際に使用する際には副鏡の後ろ側からの光が直接接眼部に入射してしまうため何らかの迷光対策が必要となります。
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トップケージは2つのリングとそれを繋ぐ筒からなり、形状としては楽器のドラムのような太い円筒型となります。 具体的には以下のような形・構成となります。
通常の筒状の望遠鏡の先端部分を切り取ったような形とも言え、市販されている大部分のドブソニアンでトップケージ型が採用されているようです。 Obsession Telescopes のClassicシリーズ、Starstructure Telescoes、Webstar Telescopes といった大型のドブソニアンはトップケージ式を採用しています。
トップケージ式は副鏡がケージの中に完全に収まっており、使用・輸送・保管中のいずれの状態でも安全であると言えます。 また副鏡の後ろ側からの光もある程度遮られるため迷光も少ないと期待されます。 一方で構成部品が多く、トップリング式よりも重く、嵩張ります。
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結論: 光学性能へ影響を与えないよう、トップケージは十分な剛性を有する構造とする。
トップケージには副鏡、副鏡セル、副鏡スパイダー、接眼部、ファインダーが取り付けられます。 これらはトップケージにしっかりと取り付けられ、望遠鏡の向きが変わっても変化しない(=光軸がズレない)ため、トップケージには高い剛性が求められます。
ここで有限要素法を使って応力を数値的に計算すればトップケージのたわみ量を求める事が出来るはずですが、私にはそのスキルはありません。 そこで次のように考えました。
トップケージは上下2枚のリングを4本以上のパイプで接続する構造です。 ここでこの上下2枚のリングのたわみ量はそれらの二次断面モーメントに比例すると考えられます。 二次断面モーメントはリングの幅の 1 乗、厚さの 3 乗に比例します。 よってトップケージのリングの「厚さ」が重要で、ここを十分厚くすることでたわみにくくできると考えられます。
次の 4.8.3. トップケージの重量 に書くように、トップケージは軽ければ軽いほど良いと言えます。 一方でトップケージがたわんでしまっては光学性能が発揮できません。 トップケージは十分な剛性を有することを第一に設計する必要があると考えます。
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結論: トップケージは十分な剛性を有しつつ、できるだけ軽く製作する。
ドブソニアン望遠鏡の場合、トップケージの重量が大きいとそれだけバランスをとるためミラーボックス側を重くする必要があります。 よってトップケージは必要な強度(たわまない・剛性が高い)を有しつつ、できるだけ軽量であるほどよいと考えられます。 自作60cmドブソニアン計画ではこの考えに従って、トップケージは出来るだけ軽くなるよう設計することにします。
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結論: 自作60cmドブソニアン計画ではトップケージの幅はできるだけ小さくする。
トップケージの幅は迷光対策を考えて十分な長さを確保するか、または副鏡を保護するための必要最低限の長さにするといった2通りの考え方があります。 それぞれのメリットデメリットを比較します。
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トップケージの元々の目的を考えると、トップケージは副鏡、副鏡セル、副鏡スパイダーを安全に格納できるだけの十分な幅を有し、さらに迷光対策のため直接接眼部に迷光が入ってこないような十分な幅を持つべきと言えます。 具体的には下図の左のような幅広(高さの高い)トップケージとすることが理想的と言えます。
しかしこの条件を満たすように作ると、主に迷光対策のためトップケージはかなり幅広に作る必要があります。 幅広になると重量はかさみ、また剛性も低下すると考えられます。 また断面積が増えるため強風で風に煽られて望遠鏡が動いてしまう原因となる可能性もあります。
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逆に幅の狭い(高さの低い、薄い)トップケージを考えると、これは副鏡、副鏡セル、副鏡スパイダーは安全に収納できるだけのギリギリの幅を有するものの、迷光対策は不十分なものとなります。 具体的には上図の右側のようなトップケージで、特にトップケージの下側からの光が接眼部に直接入射してしまいます。
一方で幅狭(高さが低い)トップケージは幅狭のため重量は軽く、剛性も高く作ることが出来ると考えます。 強風の場合でも最低限の断面積しかないため煽られにくいと考えられます。
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自作60cmドブソニアン計画の場合、望遠鏡は相対的に大きくなり、扱いにくくなると考えられます。 迷光対策は別途必要になると考えられますが、扱いやすさ、重量、剛性、強風対策から、総合的に幅の狭い幅狭トップケージのほうがメリットが多いように思います。 そこで自作60cmドブソニアン計画ではトップケージの幅はできるだけ小さくなるように作ることとします。
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結論: 自作60cmドブソニアン計画ではトップケージは脚立に乗る必要がなく、また工具も不要でトラス棒に固定できるようにする。
トップケージは観測地で暗闇の中、トラス棒の上に載せて、固定する必要があります。 自作60cmドブソニアン計画の場合、これまでよりもトップケージの取り付け位置は高く、取り付けが困難になると予想されます。 これは以外と大変な作業と考えられます。 トップケージは扱いやすく、容易に望遠鏡の組み立てできる必要があります。 具体的には、「脚立に乗らずにトップケージが取り付けられる、工具を使わず固定できる、といった2点を要請することにします。
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結論(設計変更): 自作60cmドブソニアン計画では直接アイピースに迷光が入射しないよう、トップケージに取り外し式の遮光フードを取り付ける。
(過去の結論: 自作60cmドブソニアン計画では直接アイピースに迷光が入射しないような遮光板を光路中に備える。)
迷光対策は重要で、特に副鏡のすぐ外側付近より直接アイピースに迷光が入ることになります。 そのため一般に鏡筒の側面に遮光板(フード)を置いて直接迷光が入射しないようにしています。 一方で迷光対策として大きな遮光板(フード)を用意すると風に煽られて転倒の危険も生じます。 そこで次の図のような、光路中に遮光板(バッフル)を入れて迷光対策とすることを考えます。
なお 4.9.8. シュラウド(トラスカバー)は強風で煽られて望遠鏡が動く危険性があること、取り付けそのものが面倒なため、普段は使わない前提で遮光対策は考えることにしました。
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遮光板(バッフル)を入れて迷光対策としては満足していましたが、明るい星を見た場合にスパイダーによる回折4本に加えて遮光板(バッフル)で生じる回折2本の合計6本見え、見てあまり面白くありません。 また惑星を見るとやはりこれも遮光板の回折の影響なのか、視野のコントラストが悪く感じ、あまり面白くありません。
アイデアとしては良かったと思うのですが、どうも星像が面白くないように感じたため結局トップケージ作り直しのタイミングで遮光板(バッフル)はやめることにしました。 そのかわりトップケージにはオーソドックスな遮光板(フード)をつけて迷光対策としてアイピースに直接迷光が入らないようにしました。
このような遮光フードだと風で煽られることを心配していましたが、今のところ問題なく運用できています。 ただし後付けの部品が増えたため、組み立て・分解の時間が余計に必要(といってもそれぞれ1分程度ですが)となったのが若干不満に感じてはいます。 また風が強いと振動が気にはなります。
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