ヒーターの写真
ヒーター(接眼部・ファインダー付近、写真下にあるのがヒーターの電源のバッテリー)

概要

望遠鏡が結露するのを防ぐヒーターです。 昼と夜の温度差の大きい春や秋、または夕方冷えだす時間帯など、望遠鏡はよく結露します。 一度結露してしまうとはじめは星がにじみ、結露が多くなるに従って全く見えなくなります。 その為何とかして結露を取り除くか回避する方法が必要になります。結露を取り除くためにはドライヤーで温風を送る、 メガネふきで拭き取るといった方法が考えられますが、どちらも一時的なもので根本的な解決になりません。 結露を回避する方法はヒーターや桐灰カイロを使って結露して欲しくない箇所を暖めるというもので、 暖め続ける限り持続的に露を回避することが出来ます。 ですので私はヒーターを自作し、暖めることによって結露を防いでいます。

また私はトラス式のドブソニアンを使うようになって初めて斜鏡が結露するようになりました。 これでは観望できないと言うことでヒーターを取り付けましたが、私はそれまでは斜鏡をヒーターで暖める事に抵抗を感じていました。 望遠鏡での見え味は気流の状態に大きく依存するので、わざわざ自分から気流の変化を生じさせてどうするのか、と思っていたからです。 しかし、ヒーターでほんのわずか暖める程度の熱を斜鏡付近で発生させる事と、望遠鏡のすぐそばで人体から大量の熱が出ている事、 どちらの影響が大きいでしょうか。 人体からのか熱の影響を考えると、斜鏡をヒーターで暖めても(相対的に)たいした影響はないと考えられます。 何より第一に、結露してしまうと観望できなくなってしまう、せっかくのチャンスをものに出来ないのでは悔しいので、 私はヒーターで斜鏡を暖めています。

ヒーターの自作

ホームセンターで売られて100V300Wのニクロム線を用いて自作しました。 このニクロム線は「100Vの電圧の時に300Wの出力が得られる」という意味なので、 これより低い電圧(望遠鏡などの工作の場合だと12Vでしょう)でもヒーターとして使用することが出来ます。

自作するには少なくともオームの法則等を理解していなければ難しいと思いますが、簡単に言うと、 電圧を E [V]、電流を I [A]、抵抗を R [Ω]、電力を P [W]、仕事を W [J]、時間を t [s] と書くと以下の関係式が成り立ちます。 ([]内の文字は単位でそれぞれ、ボルト、アンペア、オーム、ワット、ジュール、秒となります。)

E = R x I ・・・(1)
P = E x I ・・・(2)
W = P x t ・・・(3)

ここで100V300Wのニクロム線の場合について考えます。

まずこの100V300Wのニクロム線の抵抗を求めます。 (2)式に電力 300 [W]、電圧 100 [V] を代入することで、電流は 3 [A] だとわかります。 (1)式に電流 3 [A]、電圧 100 [V] を代入することで、このニクロム線の抵抗は 約33.3 [Ω] だとわかります。

次に12Vの電源につなげた場合を考えます。電圧 12 [V]、抵抗 33.3 [Ω] を(1)式に代入することで、電流は 0.36 [A] とわかります。 (2)式に電流 0.36 [A]、電圧 12 [V] を代入することで、電力 4.32 [W] になることがわかります。

(3)式から、これは1秒間当たり 4.32 [J] の発熱があることを意味します。これはおよそ1gの水を1度上昇させる発熱量に相当します。 実際に望遠鏡に取り付けてみた感覚では、これはヒーターがほんのり暖かくなる程度の発熱で、ちょうど良い感じです。

ニクロム線を切って長さを変えると抵抗値も変わるのでそのまま使います。 コイル状になっているので、必要な長さになるように適度に伸ばします。 そして熱収縮チューブを被せてドライヤーで加熱し、絶縁します。なおニクロム線は半田付けが利かないのでリード線との結合は 圧着端子を使いました。 なお電源のバッテリーとは直接つないでいるだけです。(一応ヒューズは入れています。)

構造

1. アイピース用

アイピース用アイピース用のヒーターは観望中、アイピースの交換の度に脱着するものなので、 快適かつ丈夫に作る必要があります。 その為、釣り竿用の伸び縮する拘束バンドにヒーターを縫いつけ、簡単に脱着できるように作りました。 操作性が良い為か、アイピースを替えてもきちんと取り付けています。 なお、接眼部付近でアイピース用のヒーターを取り外せるようになっているので、必要ない時は ヒーターを取り付けずに観測します。

2. ファインダー用

ファインダー用は対物レンズ・アイピース2箇所に巻いています。 ヒーターを直接巻いた後に前述の拘束バンドを巻いて固定しています。ヒーターは常に巻いたままの状態で使っています。 ファインダーはトラス棒の上に取り付けるので、配線はトラス棒に巻き付けてはわせています。

3. 斜鏡用

斜鏡用は斜鏡遮蔽率を考えると、斜鏡用は本当は斜鏡の裏に取り付けるべきです。 しかし、私の望遠鏡の場合、斜鏡セルなどの構造から裏側に取り付けることは出来なかったので、 斜鏡側面に取り付けています。ヒーターは両面テープで斜鏡に取り付けています。

4. 配線

ヒーターに電力を供給するための配線はファインダー用、斜鏡用、アイピース用のそれぞれはトップリングで 一本に集約して、トラス棒をつたってミラーボックス付近までいき、 バッテリーに接続するようにしています。なお、配線の接合部はすべて自動車用の平型圧着端子を使って取り付けています。 こうすることで確実な接続・簡単な脱着が可能になります。

電源

現在は暫定的に大自工業製のSG-1000ポータブル電源を用いています。 仕様書を読む限り 12 [V] x 7.0 [Ah] = 84 [Wh] = 84 x 3600 = 302,400 [J] の容量があるので 5 [時間] ヒーターを使うことが出来るはずですが、 寒い季節だとすぐに起電力が下がってヒーターが暖まりません。今のところこのバッテリーで問題ないので使っていきますが、 そのうち自動車用の鉛バッテリーを使う予定です。

その他