ここではオートコリメーターのオフセット穴から見える4つの主鏡センターマークの位置について考察します。

オートコリメーターのオフセット穴とは?

オートコリメーターとはアイピース状の形をした、レンズが無く、その代わり中央にピンホールが開けられ、裏面が平面鏡となっている光軸調整用のアイピースのことです。 裏面の平面鏡は筒の中心軸と正確に直交するように調整されて取り付けられています。

ここで「オフセット穴」とは Catseye 社製のオートコリメーター、 Infinity XLKP に開けられている、中心以外に開けられたピンホールのことです。

Catseye Infinity XLKP
オフセット穴のあるオートコリメーターの例:Catseye Infinity XLKP

何を、どこに合わせるのか?

オートコリメーターのオフセット穴の場合、オートコリメーターを望遠鏡の接眼部に取り付け、オフセットされたピンホールをのぞき込み、そこから見える「主鏡上に投影されて見える4つの主鏡センターマーク」のうち、(P) と (2)、(1) と (3) が一致するように調整する事で、光軸を調整することになります。 4つの主鏡センターマークは中央穴から覗いた場合と同じように (P)、(1)、(2)、(3)と呼ぶことにします。これらは以下のような反射を経て、主鏡上に投影されて見えていることになります。

オートコリメーターのオフセット穴から覗いて見ると、次の写真のように主鏡センターマークがいくつか見える事になります。 わかりにくいのですが、4 つの像が 2 つずつペアで重なって見えています。 オートコリメーターのオフセット穴では、これら4つの像のうち (P) と (2)、(1) と (3) の主鏡センターマークが一致するよう、主鏡と副鏡の傾きを調整することになります。

オートコリメーターで覗いた場合の写真

計算結果

計算は途中までオートコリメーター:中央穴と全く同じ計算なので、オフセット穴の場合の特有の計算のみを以下に示します。

計算結果 計算結果

よって主鏡の傾き誤差 α、副鏡の傾き誤差 β、接眼部の傾き誤差 γ がある場合、オートコリメーターで見える「4つの主鏡センターマーク」の位置はそれぞれ xP、x1、x2、x3 と書くと

xP = 0 α + 0 β + 0 γ
x1 = - 4f α - 4(f+b) β + 2f γ + 2x0
x2 = 4f α + 8f β - 4f γ
x3 = 0 α + 4a β - 2f γ + 2x0

の位置に見えることになることがわかりました。 x0 はオフセット穴の位置となります。 よってオートコリメーターの中央穴から見た場合と比較して、オフセット穴から見た場合は単に、x1、x3 にオフセット 2x0 が加わっていることになります。 ここで (P) と (2)、(1) と (3) が一致する、つまり

xP = x2
x1 = x3

となれば、光軸は合っていることになります。

オフセット穴の注意点(重要)

上記の式を解くと判るのですが、オフセット穴から覗く場合、光軸が合っていないにもかかわらず光軸が合っているように見えてしまうことがあり、注意が必要です。 具体的には α + 2β = γ が成り立つ場合、オフセット穴から覗くと xP = x2、x1 = x3 と見えてしまうことになります。

ここで光軸が合っている状態とは、ニュートン反射の光軸修正法の まとめ のところに書いた通り α = (-b/a) γβ = (f/(2a)) γ の条件を満たす時のみです。 α + 2β = γ というのはこれよりも条件が緩く、光軸は合っていません。 よってオフセット穴だけを見て光軸が合っているかどうか判定することは出来ません

ただし、この性質は単に欠点というわけではなく、この性質を利用することで オートコリメーターのオフセット穴とチェシャアイピースを使って光軸を追い込む ことを可能としています。 詳細はリンク先を確認して下さい。