1. 計画に至った経緯
  2. 計画の目的
  3. 計画の達成度の評価
  4. 計画の期間
  5. 計画の予算 (超概算見積もり)

1.1. 計画に至った経緯

2000年頃からドブソニアンによる観望に興味を持ち、2001年にR200SSを用いたドブソニアン架台の製作、2004年にR200SSを改造したドブソニアンの製作、2006年に 自作40cmドブソニアン の製作を経て、私はどっぷりとドブソニアンによる天体観望および 天体スケッチ の魅力にはまりました。 そして経験を重ねるうち、徐々に自分のやりたいことがわかってきました。

私の場合、それは銀河や惑星状星雲といった小さく淡い天体を詳細に観察・スケッチすることでした。 暗い銀河や惑星状星雲は一見どれも同じように円状か楕円状の淡い光のシミにしか見えませんが、時間をかけて観察を続けると淡いながらも濃淡が見え、天体毎に個性があることに気がつきます。

しかし小さく淡い天体を詳細に観察・スケッチすることは容易ではありません。 第1にこれらの天体は小さく淡いため快適に観望するためには大口径の望遠鏡が必要になります。 第2にシーイングの影響で星がぼやけてしまうため、詳細に観察・スケッチしようと高倍率にしてみてもぼやけて見えるだけで、シーイングの良い日に観察・スケッチしなければいけません。 そのため思うように小さく淡い天体を詳細に観察・スケッチすることはできませんでした。

幸いなことに2014年5月よりアメリカ合衆国ハワイ州ハワイ島ヒロに転居することになり、暗い空と良いシーイングが得られるようになりました。 そこで思い切ってこれまでよりも大きな望遠鏡を導入し良シーイングを生かして小さく淡い天体をより詳細に観察・スケッチしたいと考えました。

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1.2. 計画の目的

自作60cmドブソニアン計画の目的は、自作40cmドブソニアンと比較して「より高い倍率」で「より快適」に「小さく淡い銀河や惑星状星雲」の「観望・スケッチ」を行う事が可能な望遠鏡を「自作」し、今後も「継続して観察・スケッチを続ける」ことでさらなる経験を得ることです。

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1.3. 計画の達成度の評価

計画の達成度を定量的に評価したいと考えます。 そこで自作60cmドブソニアン計画では「年間10回以上の観察」かつ「年間15枚以上のスケッチ」を達成度の評価基準として設定します。 大きなドブソニアンによって観望、スケッチを行うモチベーションを上げ、継続して新しい経験が得られることを目指します。

可能であれば毎月遠征したいところです。 が、諸事情で行けない事もあると思います。 またスケッチ枚数もこれまでの実績から1夜につき1枚か2枚が妥当なところです。 1遠征あたり1.5枚を目標にと考えました。

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1.4. 計画の期間

自作60cmドブソニアン計画の運用期間は15年と定義します。 2016年からの運用開始を目指すので、具体的には2016年~2030年の期間に運用することを考えます。 プロジェクトマネジメントの考え方ではプロジェクトには必ず「始まり」と「終わり」が定義されます(有期性)。 そこで本計画でも計画の始まりと終わりを明確に定義して運用期間を定めることにします。 こうすることで、1年間当たり、1スケッチ当たりのコストを見積もることができ、計画の妥当性を検証可能にすることが出来るようになります。

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1.5. 計画の予算 (超概算見積もり)

自作60cmドブソニアン計画の必要費用を超概算で見積もります。 計画期間である15年間のトータルの費用を見積もり、1観察あたり、1スケッチあたりの費用を見積もることで、本計画への投資が妥当かどうか検証します。 (約6年運用した2022年4月現在の実績も追記しました。かっこ内は2030年までに推定される追加のコストです。)

自作60cmドブソニアン計画の超概算見積もり
推定 実績
主鏡・斜鏡等の光学系 $10,000 $16,500
光学系以外の部品 $1,000 $2,000
筐体の材料費 $1,000 $2,000
工具および工作環境の整備 $1,000 $1,500
主鏡・斜鏡再コーティング(1回) $2,000 $2,500
大規模メンテナンス(1回) $1,000 $0 (+$1,000)
アイピース等購入 $7,500 $3,000 (+$4,500)
書籍購入 $3,000 $1,000
1ヶ月当たり、1スケッチ当たりのコスト
推定 実績
60cmドブ計画の合計費用(概算) $26,500 $28,500 (+$5,500)
1年間あたり $1,767 $2,267
1ヶ月あたり $147 $189
1観望あたり $177 $227
1スケッチあたり $118 $151

以下に比較として自作40cmドブソニアンでのスケッチに支出してきた費用も超概算でまとめます。 2006年~2015年の10年間使用したと仮定して、これまでの投資をほぼ反映させたています。スケッチ枚数は2010年以降の傾向として年平均10枚を仮定しました。

自作40cmドブの運用コスト(実績)
実績
主鏡・斜鏡等の光学系 $2,000
光学系以外の部品 $400
筐体の材料費 $500
工具および工作環境の整備 $400
その他 $300
大規模メンテナンス(1回) $1,000
アイピース等購入 $5,000
書籍購入 $2,000
1ヶ月当たり、1スケッチ当たりのコスト
実績
自作40cmドブの合計費用(概算) $11,600
1年間あたり $1,160
1ヶ月あたり $97
1スケッチあたり $116

自作60cmドブソニアンを15年間にわたって運用する場合、これまでの自作40cmドブソニアンの運用と比較して1ヶ月あたり約1.5倍のコストが必要になることがわかりました。 しかし大口径化によるモチベーションの向上によってスケッチ枚数が1.5倍に増加すると仮定すると、1スケッチ当たりのコストは殆ど変わらない事になります。 「継続して」観察・スケッチを続け、さらなる経験を得ることが本計画の目的であることを考えると、大口径化によるモチベーションの向上によってより多くの経験をこれまでとほぼ同等の単価で実現できることが分かりました。

今回の試算では、望遠鏡製作にかかるコストに加え、運用にかかるコストも洗い出してみました。その結果、15年間の運用に必要なコスト(主鏡・斜鏡の再メッキや大規模メンテナンス、アイピースや書籍の購入)は望遠鏡本体の製作に必要なコストとほぼ同等であることも分かりました。この結果も今後望遠鏡を維持する上で非常に重要な結果だと思います。

2022年4月補足

自作60cmドブを約6年運用した2022年4月現在までのコストを積算してみたところ、現時点で約$2000、15年の使用後で約$7500、当初予算よりも超過することが判明しました。 これは主に光学系の調達コストの見積の精度が悪かったことが原因です。 1回の観望あたりのコストやスケッチ1枚あたりの実際のコストは想定よりも高くなってしまいました。

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