ここではレーザーコリメーターで主鏡の傾きを調整する手順について考察します。
レーザーコリメーターとは、レーザーポインターがアイピース状の形の筒の中心軸に位置と角度が正確に筒の中心軸と同一となるように取り付けられた光軸調整用の道具です。 レーザーポインターの位置と向きは正確にアイピース状の筒の中心軸と一致するように調整されているため、レーザーコリメーターから射出される光を追うことで光学系の傾きが正しいかどうか調べることが出来ます。
レーザーコリメーターで主鏡の傾き調整をする場合、レーザーコリメーターを望遠鏡の接眼部に取り付けて使用します。 射出したレーザー光は 副鏡 → 主鏡 → 副鏡 の順に反射し、再びレーザーポインターの射出部にも取ってきます。 この「レーザーポインターに戻ってきたレーザー光のスポット」と「レーザー射出部」とを一致させるよう、主鏡の傾きを調整します。 以下の写真のように、レーザーポインターの射出部に戻ってきたレーザー光のスポット(写真では赤い点)をレーザーの射出部分に一致するよう、主鏡の傾きを調整することになります。
以下に計算結果を示します。
よって主鏡の傾き誤差 α、副鏡の傾き誤差 β、接眼部の傾き誤差 γ がある場合、レーザーコリメーターを使用すると「レーザーポインターに戻ってきたレーザー光のスポット」は
x = 2f α + 2(f+b) β - f γ
の位置に投影されることがわかりました。 これを「レーザー射出部」
x = 0
と一致する(重なる)よう、主鏡の傾きを調整することになります。
以前に私は α = β = γ = 0 という状態を光軸が合った状態と定義していました。 しかしよくよく考え直してみたところ、ニュートン反射の光学系で「光軸が合った状態」とは「主鏡の光軸と接眼部の光軸が一致すること」と定義するのが正しいと考え直しました。 そのためこれまで「光軸が合っていないにもかかわらず光軸が合っているように見える状態」としてきた状態も、正しい定義では「光軸が合った状態」であることになりました。
私はこれまで何度か「レーザーコリメーターでは光軸が合っていないにもかかわらず光軸が合っているように見えてしまうことがあります」とウェブ上で発信してきましたが、これは正しくありませんでした。 オートコリメーターのオフセット穴 以外であれば、レーザーコリメーターを含め、光軸調整アイピースで光軸が合っているように見えるのであれば、光軸は合っています。
以上、訂正します。(沖田博文 2019年5月22日)