M31のスケッチ

黒い厚紙を切り抜いて作った自由に動かすことのできる「視野絞り」を用いて白紙のコピー用紙にM31をスケッチ。 自作60cmドブソニアンSIPSEthos 21mm を組み合わせて最も広い視野が得られるようにしたけれど、これでも見かけ視野は0.92度しかない。 そこで視野をずらしてスケッチを重ねることで見かけ視野の限界を超えてスケッチすることを思いついた。 もう少し高い倍率で見ようとも思ったけれど、M31はこの組み合わせ、110倍ぐらいがちょうど良いと思った。

M31を 視野中心 に入れると視野一杯に滑らかなガスが複雑な構造を伴って広がっているのが見える。 中心は鋭い集光が見えられ、恒星のように見える。 この中心の鋭い一点の集光からガスは滑らかに楕円形を示しながら徐々に淡くなっていく。 特に明るく銀河のコアと思われる部分は東西に延びたような楕円形。 この傾きは銀河全体とは異なっているようで、銀河全体としては北東~南西に伸びた楕円形をしている。

M31のスケッチ

北西方向にはっきりと暗黒帯が2本見える。 中心から近い方の暗黒帯は特にはっきりと銀河に影を落とすように黒く抜けて見える。 この銀河中心に近い暗黒帯は銀河の北付近から暗黒帯が見えてそのまま緩い弧を描いて銀河の南西付近で周囲のガスに溶け込み、どこまで見えるのか分からなくなる。 1本目と2本目の暗黒帯の間には比較的同じ幅のガスが流れて見えるが見える。 これも南西付近で暗黒帯と交わってよく分からなくなる。 そして2本目の暗黒帯は先ほどのガスの流れの外側に沿って、これもまた緩く弧を描いて、南西側でよくわからなくなる。

銀河の南西側は全体的にガスと暗黒帯が複雑に混ざり合っているのか、ガスの流れや塊があるような、ないような、はっきりとしない。 一様にガスで満たされているわけではなく、濃淡は確かにある。 だがはっきりと分かるほど明るいわけではない。 NGC206とその近くに星団があり、これらは比較的明るくはっきり見える。 中心から大きく離れているため、はじめな別の天体のようにも思ったが、ガスの流れを追っていくと確かにM31の一部だと気が付いた。

M31のほぼ真南にM32が見える。 M32もM31と同様に中央一点に集まる強い集光が見られ、中心は恒星のよう。 そこからほぼ綺麗な円形でコアが広がり、背景に溶け込む。 M31の腕とはちょうど境界線にあるような位置のようで、南南西側は少し重なって見えた。 M31の腕はM32をギリギリかすめ、滑らかに北東に向かって流れる。

M31の南東~東~北東の領域は銀河からある程度離れた領域にいくつかの明るい恒星に沿うように淡いガスがぐるっと弧を描いているのが分かる。 この弧は最終的に2本目の暗黒帯の外側をうっすらと囲むようにして、そのうちよく分からなくなる。 銀河の北東端付近は複雑に流れが入り乱れているような感じで、何本にも流れが分かれて見えた。 これと合わせて北東の端のあたりに星団もあり、銀河中心から離れている領域であっても銀河の一部らしき何らかの構造が見え、銀河が確かにここまで広がっているんだと感じた。 一方で銀河中心の特に明るい領域と外側のぐるっと弧を描く領域の間は特に目立った構造が見られない領域があった。 ただし一様な淡いガスが満たされているような感じで、ここにも全く何もないわけではない。

M31から望遠鏡を大きく北西に振ると M110 が見えてくる。 M110は全体的に均整の取れた楕円形。 M31、M32と比較して中央の集光が弱い。 どこが中心なのかよく分からず、ぼんやりと淡く見えた。 特に構造が見られるわけでもなく、ただ淡く楕円に広がる。 楕円の向きはほぼ南北方向。 しかしそらし目で見ると南東~北西方向に淡く広がる成分もあるように感じた。 M31との相互作用で潮汐力でガスが広がっているのか?と思った。 ただしM31とは完全にガスは分かれていて重なっては見えない。

M31のスケッチ

本当に淡い領域を見ようとしている時、特に明るいM31の中心部が視野に入ってしまうと視野が明るくなってしまい本当に微かな淡い領域が見えなくなってしまう。 今回スケッチしながらこのことに気が付いた。 非常に淡いガスの流れは銀河中心を視野から外してじっくり見続けないと見えてこないようだ。 倍率を下げてM31の全体像が一度に見えるようにした場合、こういった本当に淡い領域は見えてこないのではないかと思った。

スケッチは19時20分に開始して星のプロットが終わったのが23時20分。 星雲部分はここから描き始めて、全て完了したのが25時00分。 実に5時間40分もかかってしまった。 ぶっ通しで没頭してスケッチしたこともあって本当に大変だったけど、見えているものはできる限り正確にスケッチできたと思う。 M31周辺には明るい星や特徴的な星列はなく、星の位置を記録するのが大変だった。 またスケッチ開始の時にはまだ東の空にあったM31はスケッチ終了時には子午線を通過して西の空に傾いていた。 スケッチ中は視野がどんどん回転して、これもスケッチを困難にした。 視野は合計で130度ぐらい回転したように思う。 画板毎スケッチ用紙を回転させたり首をひねってアイピースを覗いたりしてスケッチした。

これまで私は天体スケッチを描く際に視野絞りを基準に視野内の見えているものを描いてきた。 そのため今までのやり方だと視野絞りに制限されて、こういった大きく広がった天体のスケッチはできなかった。 今回自由に動かすことのできる「視野絞り」を使ってこの制限を超えてみた。 スケッチは本当に大変だったけれど、満足感や充足感はそれ以上に大きいことがわかった。 何事も限界を決めているのは自分自身なんだなと思った。

これが自作60cmドブソニアンによる100枚目のスケッチ。 これからも色々な天体をスケッチしたい。

天体のデータ
M31アンドロメダ座銀河3.5等189.1' x 61.7'250万光年
M32アンドロメダ座銀河8.1等8.5' x 6.5'250万光年
M110アンドロメダ座銀河7.9等19.5' x 11.5'270万光年
NGC206アンドロメダ座銀河の一部--250万光年
スケッチデータ
スケッチ開始日時2021年10月30日19時20分
スケッチ終了日時2021年10月30日25時00分
観測場所ハワイ島 マウナロア山 観測所前の駐車場 (海抜3,400m)
使用機材自作60cmドブソニアン + SIPS Ethos 21mm (110倍, 0.92度)
スケッチ範囲は約1.4度×1.9度

M31, M32 アンドロメダ銀河 (NGC224, NGC221)

M31,M32のスケッチ

M31,M32のスケッチ

実視野1.2度で見たM31アンドロメダ銀河のスケッチ。 当然ながら中心部のみのスケッチで、全体像はつかめない。 光量は周辺分から中心にかけてなめらかに増大している。 西に暗黒帯が2本見えた。 大きく、どこまでも広がっているようで(実際広がっている)スケッチが非常に困難だった。 同一視野内にM32も見えた。 M32は特徴のない小さな楕円銀河のように見えた。

天体のデータ
M31アンドロメダ座銀河4等150'230万光年
M32アンドロメダ座銀河8.5等3.5'230万光年
スケッチデータ
スケッチ終了日時2008年9月8日23時45分
観測場所栃木県 鬼怒川温泉 もみじライン富士見台駐車場
使用機材自作40cmドブソニアン + パラコア + Nagler Type5 31mm (67倍, 1.2度)

M110 (NGC205)

M110のスケッチ

ぱっと見た感じでは大きく見えるが、意外と小さい。 といってもM32よりも大きく見える。 中心部は結構明るく見え、また視野の東側はM31の一部も見えていたのかもしれない、少し明るく感じた。

天体のデータ
M110アンドロメダ座銀河8.5等10'230万光年
スケッチデータ
スケッチ終了日時2008年10月3日27時50分
観測場所東北大学天文同好会安達観測所
使用機材自作40cmドブソニアン+パラコア+Nagler Type4 22mm(95倍, 0.85度)