ここでは副鏡セルについて検討します。
結論(設計変更):自作60cmドブソニアン計画では副鏡セルとして「ホルダー式」を採用する。
(過去の結論:副鏡セルには「ホルダー式」と「貼り付け式」がある。自作60cmドブソニアン計画では「貼り付け式」を採用する。
副鏡を望遠鏡に取り付ける(固定する)方法として「ホルダー式」と「貼り付け式」とが考えられます。 これらをそれぞれ考察します。
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「ホルダー式」とは副鏡全体をぴったりの形に加工されたホルダーに入れて副鏡を望遠鏡に取り付ける方法のことです(私が勝手に名付けました。)。 私の調べた限り、Obsession Telescopes, AstroSystems, JPAstrocraft, Starmaster Portable Telescopes 等のドブソニアンに採用されているようです。
ホルダー式のアドバンテージは副鏡の側面を全周で支える事が出来るため、変形やたわみが生じにくい構造だということです。 また貼り付け式とは異なり、副鏡を副鏡セルに貼り付けるわけではないので、いつでも副鏡を取り外すことができます。 副鏡のみを取り外して洗浄等のメンテナンスを行う事が出来ます。
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ホルダー式ならいつでも副鏡を取り外して容易にメンテナンスが行えるものと考えていましたが、実際に 5.5 inch の副鏡を運用した経験から、副鏡をホルダーに入れる際に十分に注意して作業しないと副鏡の角とホルダーが当たってしまい、副鏡に「カケ」を生じさせてしまいます。 私の場合、不注意のため、副鏡ホルダー製作時に直径 2 mm ぐらいのカケを、再コーティングのためにホルダーから外した際に直径 4 mm ぐらいのカケを生じさせてしまいました。 よって相当慎重に作業しないと副鏡にダメージを与えてしまうことが判りました。 現在はよっぽどのことがない限り副鏡をホルダーからは外してメンテナンスしたいとは思いません。
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「貼り付け式」とは副鏡裏面と副鏡セルをシリコン(シリコン樹脂)で貼り付けた構造の副鏡セルのことを指します(私が勝手に名付けました。)。 貼り付けといってもべったりとシリコンを付けて固定するのではなく、副鏡とセルを数 mm 浮かせ、数点をくっつけることで鏡をセルに取り付けます。 この形式は Orion Optics UK や Sky-Watcher 等の望遠鏡に採用されているようです。 また私の自作40cmドブソニアンも副鏡セルは「貼り付け式」でした。
貼り付け式のアドバンテージは副鏡を副鏡セルに貼り付けるだけなのでシンプルに製作する事ができることです。 コストダウンと同時に、構造が単純で外気と直接触れあう面積が大きいため温度順応が良いことも期待されます。
ただし副鏡を副鏡セルに貼り付けてしまうため、副鏡セルの熱膨張率は副鏡のそれとほぼ同一でなければ温度変化によって副鏡を変形させ、星像を悪化させるおそれがあります。 また副鏡はセルに貼り付けているため簡単に剥がすことは難しく、洗浄などのメンテナンスを行う時にはセル毎洗浄するなど工夫が必要です。
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自作60cmドブソニアン計画では副鏡セルは必要十分な強度で副鏡を支えられ、かつ簡単に自作できる構造としたいと考えるため、「貼り付け式」を採用したいと考えます。
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自作60cmドブソニアンでは高倍率で星像に非点収差が見られたことや高度変化で光軸が容易にズレたことから「貼り付け式」を断念し、「ホルダー式」に製作し直しました。
しかし作り替えたところで特に大きな変化は見られませんでした。 最終的に非点収差の原因は主鏡にあることがわかり、副鏡の貼り付け式はその原因ではなかったようです。 また光軸ズレについても貼り付けに使用したシリコンの厚さを 1 mm 程度と薄くすれば光軸ズレはほとんど生じませんでした。ですので必ずしも「貼り付け式」がダメと言うわけではないように思います。むしろホルダーに入れる際にカケを生じさせるリスクを考えると、貼り付け式の方が良かったかもしれません。貼り付け式だと副鏡は鏡端まで完全に使えるというのもメリットだと思います。
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結論(設計変更):「ホルダー式」の副鏡セルの場合、熱膨張率にこだわる必要はない。
(過去の結論:貼り付け式の副鏡セルの場合、熱膨張率が副鏡に近い材質を用いる必要がある。合板 (Hardwood Plywood) の熱膨張率はパイレックスのそれに近く、合板で副鏡セルを作れば温度変化による副鏡の変形はほとんど発生しないと考えらえる。)
副鏡セルを「貼り付け式」とする場合、副鏡と副鏡セルの 熱膨張率 ができるだけ一致する必要があると考えられます。
ここで例えば短径 100 mm の副鏡とそれを支える貼り付け式の副鏡セルを考えます。 副鏡は一般にパイレックス等の熱膨張率の小さい材質で作られています。 パイレックスの熱膨張率は 3.3 x 10-6 (/oC) なので温度が 10oC 変化すると副鏡短径は 0.0033 mm 変化することになります。 これに対し副鏡セルが例えばアルミで出来ている場合、アルミの熱膨張率は 23 x 10-6 (/oC) なので副鏡セルは 0.023 (mm) 変化することになります。 温度変化によって副鏡と副鏡セルの大きさが異なってしまいました。 そのため副鏡と副鏡セルの貼り付け面には応力がかかり、副鏡の形状を変形させようとする力が働き、その結果星像が悪化すると考えられます。
そのため貼り付け式の副鏡セルの材質には出来るだけ副鏡の熱膨張率に近いものを使う必要があります。 幸いなことに近所のホームセンターで入手できる 合板 (Hardwood Plywood) の熱膨張率 は 1.6 x 10-6 (/oC) と、パイレックスのそれに近いことが実験から判りました。 そこで合板を副鏡セルの材料として用いれば「貼り付け式」でも温度変化による副鏡の変形はほとんど発生しないと考えられます。 よって貼り付け式の副鏡セルは熱膨張率が副鏡に近い合板 (Hardwood Plywood) で製作すれば、温度変化による副鏡の変形はほとんど発生しないと考えられます。
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自作60cmドブソニアンでは星像に非点収差が見られたことや光軸ズレが生じたことからホルダー式の副鏡セルに製作し直したため、熱膨張率にこだわる必要はなくなりました。ホルダー式だと副鏡はホルダー内に入っているだけで固定しません。そのため仮に副鏡セルの熱膨張率が副鏡のそれと大きく違っても(十分な空間的な余裕があれば)副鏡は自由に動くことができ、その影響は生じないと考えられます。
ただし、副鏡セルを作り替えたところで非点収差や光軸ズレに特に大きな変化は見られませんでした。そのため熱膨張率にこだわった副鏡セルの設計も含め、貼り付け式のセルでも問題はなかったと思っています。
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結論(設計変更):自作60cmドブソニアン計画では副鏡はホルダー式の副鏡セルに入れ、鏡周で一様に支える。
(過去の結論:自作60cmドブソニアン計画では Plop で最適化した 6 点で副鏡裏面を支持する。 この支持方法ではPVで λ/88 ~ λ/200 程度の波面誤差が見込まれる。)
主鏡裏面の支持方法 では "Plop" と言う名前の有限要素法による主鏡支持点の最適化ソフト(Automated Mirror Cell Optimization)を用いてたわみ量を計算しました。 そこで副鏡の場合も Plop を使ってたわみ量(鏡面誤差)を計算することを試みます。 ただし Plop は主鏡のたわみ量を計算するソフトウェアであり、楕円形(副鏡の形状)の場合のたわみ量を正しく計算することができません。 そこで今回は短径と等しい円形の平面鏡、長径と等しい円形の平面鏡の2つの場合を考え、これらの結果から楕円形の副鏡での結果を推定することにしました。
副鏡直径 | 139.7 (mm) |
副鏡厚さ | 25.4 (mm) |
焦点距離 | 999999999 (mm) |
副鏡直径(影になる直径) | 0 (mm) |
支持点数 | たわみ量(RMS) | たわみ量(PV) |
---|---|---|
3 | 0.61 (nm) | 2.93 (nm) |
6 | 0.189 (nm) | 1.27 (nm) |
9 | 0.169 (nm) | 0.860 (nm) |
副鏡直径 | 197.57 (mm) |
副鏡厚さ | 25.4 (mm) |
焦点距離 | 999999999 (mm) |
副鏡直径(影になる直径) | 0 (mm) |
支持点数 | たわみ量(RMS) | たわみ量(PV) |
---|---|---|
3 | 1.95 (nm) | 8.14 (nm) |
6 | 0.463 (nm) | 2.87 (nm) |
9 | 0.482 (nm) | 2.30 (nm) |
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ここで波長 505 nm(暗順応視感度のピーク)の場合の波面誤差を計算します。 波面誤差は鏡面誤差の 2 倍なので支持点が 3 点、6 点、9 点の場合、PV の波面誤差は λ/31~λ/86、λ/88~λ/200、λ/110~λ/290 となりました。
光学系の精度 に書いたように、レーリー・リミットを満たすためには光学系全体でPVの波面誤差は λ/4 以下でなければなりません。 光学系全体としてレーリー・リミットを満たすためには副鏡裏面の支持点も出来るだけ多くして鏡面誤差の発生を最小限にする必要があると言えます。 今回の計算結果からは 3 点支持でも特に問題はないことが判りました。 しかし工作の手間は 3 点で 6 点でもほとんど変わりません(単に貼り付けるだけ)。 そこで自作60cmドブソニアンでは 6 点で副鏡を副鏡セルに「貼り付け」たいと考えます。ページの先頭に 戻る
自作60cmドブソニアンでは星像に非点収差が見られたことや光軸ズレが生じたことから「ホルダー式」の副鏡セルに製作し直したため、ここで議論した方法とは別の検討が必要となりました。 ホルダー式では鏡周を一様に支えることになるため、この場合のたわみを計算する必要があります。
参考文献によると、鏡周で支えた半径 a、厚さ h のガラス円盤のたわみは鏡の中心部で最大となり、その値は次の式で与えられます。
ここで D は次の式で計算される量で、q は 1 cm2 あたりの圧力、E は鏡材のヤング率、σ は鏡材のポアソン比を意味します。
ここでパイレックスの場合を考えると、E = 6.68 x 108 g/cm2、σ = 0.2 であり、大気圧とすると q = 9.25 g/cm2、自作60cmドブソニアン計画で考えている 5.5 inch 副鏡の場合、h = 2.54 cm、a = 6.99 cm(副鏡短径と等しい円形の場合)または a = 9.88 cm(副鏡長径と等しい円形の場合)となることから、たわみ wmax を計算しました。結果は次の表となりました。
a (cm) | たわみ量 wmax (PV値) |
---|---|
6.99 | 1.57 (nm) |
9.88 | 6.28 (nm) |
ここで波長 505 nm(暗順応視感度のピーク)の場合の波面誤差を計算します。 波面誤差は鏡面誤差の 2 倍なので、鏡周でささえた場合、PV の波面誤差は λ/40~λ/160 となります。 この値は 4.1.3. 光学系の精度 に書いたレーリー・リミットを満たすための条件「光学系全体でPV波面誤差は λ/4 以下」を十分満たします。 よって鏡周を一様に支えるホルダー式でも問題なく副鏡を支えられる事が判りました。
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なお、私の直感では「ホルダー式」の方が「貼り付け式」よりも高精度に副鏡を支えられると考えていましたが、計算結果からは6点で貼り付けたほうが鏡周を一様に支えるよりも良いという結果が得られました。よって副鏡セルの材質を工夫しさえすれば、貼り付け式は十分実用になると思います。
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結論(設計変更):ホルダー式の副鏡セルの場合、あまり剛性にこだわる必要はない。
(過去の結論:副鏡セル自体もたわむため、光学性能に影響しないよう十分な剛性で製作する。)
副鏡のたわみの他、副鏡セル自体のたわみ量も考慮に入れる必要があります。 有限要素法を使って応力を数値的に計算すれば副鏡セル全体のたわみ量を求める事が出来るはずですが、私にはそのスキルはないので単純なモデルを考えて、各部で生じる最大のたわみ量を計算し、副鏡セルが水平のときと垂直のときでどれだけ副鏡セル全体がたわむか推定することを当初考えましたが、副鏡セルの形状は複雑で、推定は私には困難に思いました。
そこで(貼り付け式の)副鏡セルでは、単に合板を重ね合わせてブロック状の塊を作ることでたわまない構造を目指すことにしました。4.6.2. 副鏡セルの材質で検討したように、材料としては合板(Hardwood Plywood)であるので、合板を適当な大きさに切って木工ボンドで貼り合わせて、副鏡セルを作りたいと思います。重量がかさむため本当はきちんと設計したいところですが、今回は光学性能に影響が出ないよう、できる限り大きな合板の塊を製作し、副鏡セルとしたいと考えます。
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自作60cmドブソニアンでは星像に非点収差が見られたことや光軸ズレが生じたことから「ホルダー式」の副鏡セルに製作し直しました。ホルダー式の場合、副鏡はホルダー内に入っているだけで固定するわけではないため、仮に副鏡セルがたわんだとしても、(十分な空間的な余裕があれば)副鏡は自由に動くことができ、その影響が光学的に生じるとは考えられません。もちろん大きくずれてしまっては光軸がズレてしまうため、光軸がズレない程度には剛性は必要です。
ちなみに、副鏡セルを作り替えたところで非点収差や光軸ズレに特に大きな変化は見られませんでした。そのため合板を塊にして製作した副鏡セルの剛性も含め、貼り付け式のセルでも問題はなかったと思います。
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結論(設計変更):自作60cmドブソニアン計画では副鏡の光軸調整は手動で行う。
(過去の結論:自作60cmドブソニアン計画では副鏡の光軸調整は電動で出来るようにする。)
2.11 光軸調整 に書いたとおり、光軸調整の時に副鏡光軸を調整するには六角レンチが必要で、面倒で、またツールを落とす心配もありました。 そこで副鏡セルにも 4.3.8. 主鏡の光軸調整 と同様に「モーターを組み込んで電動で調整する」こととしたいと思います。 主鏡セルの場合と同様、接眼部に光軸調整アイピースを取り付け、これを覗きながら手元のコントロールボックスのスイッチを操作して電動で副鏡の光軸調整ネジを回すことで光軸を合わせられるようにしたいと思います。
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副鏡セル、副鏡スパイダーの設計の際になんとかモーターが組み込めないか何度も検討を行いましたが 5.5 inch 副鏡の影に隠れる大きさ(直径約 14 cm)という制限が想像以上に厳しく、モーターを組み込むことが出来ませんでした。 そのため自作60cmドブソニアンの副鏡の光軸調整では、これまで通り六角レンチを使った手動で調整することになりました。 なお6角レンチは主鏡に落とさないように腕にストラップを付けて使用しています。
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暗闇で六角レンチを使って光軸調整するのはかなり面倒でした。 そこでステンレス棒とネジを溶接して T字型のネジ を自作し、手で回すことが出来るように工夫しました。 容易に調整が出来るようになったため、これまでよりも高頻度に調整できるようになり、これは正解でした。
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結論(設計変更):副鏡の光軸調整の支点の位置はあまりこだわる必要はない。
(過去の結論:副鏡の光軸調整(傾き調整)によって副鏡の位置がズレることになるため、副鏡セルの支点は出来るだけ鏡面の近くになるように設計する。
望遠鏡でシャープな星像を得るには光軸調整が欠かせません。 副鏡も一般にはその位置と傾きを調整することになりますが、一方で一般的な構造の副鏡セルでは副鏡の「傾き」と「位置」を独立に調整することが出来ません。 以下の図は副鏡と副鏡セルを模式的に描いたものになります。
まず左図が副鏡・副鏡セルの元々の状態だと考えます。 この状態で副鏡上のある一点(青点)が光軸(赤点線)に一致している状態と考えます。
ここで一般的な構造の副鏡セルの場合、副鏡の傾き調整を行うと中央の図のような状態となります。 一般的な構造の副鏡セルの場合、この図の赤点の位置を回転中心として副鏡セル及び副鏡が回転し、副鏡はその傾きを変えることになります。 副鏡上のある一点(青点)は回転の中心(赤点)から大きく離れているため、その位置も大きく動くことがわかります。 これが副鏡の「傾き」と「位置」を独立に調整出来ない、という意味です。
一方で右図のように回転中心(赤点)を出来るだけ副鏡上のある一点(青点)に近づけるような構造とした場合、同じ量回転させてたとしても距離が小さいためその位置の変化は相対的に小さくなります。
自作60cmドブソニアン計画で製作する副鏡セルも光軸調整によって「傾き」を調整する機構を備えることになります。 そこで上記の考察の通り、副鏡セルの支点(赤点)を出来るだけ副鏡面の近くになるようにすることで、副鏡の傾き調整による副鏡の位置のズレが最小限になるような構造としたいと思います。
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当初設計では副鏡の傾き調整で位置が出来るだけズレないようにこだわって製作しましたが、実際には最初に望遠鏡を組み上げ、初めて光軸を調整したときに何回か副鏡の傾きと位置の調整を繰り返す必要がありましたが、それ以外では副鏡の傾きはほとんど変わることはなく、そのため副鏡の位置もほとんど変わりませんでした。
よってこの支点を出来るだけ副鏡面に近づけるというアイデア自体は正しいと思うのですが、必ずしも必須の要件かと言われると、そうではないように思い直しました。 そのため副鏡セルをシリコン貼り付け式からホルダー式に製作し直した際には支点の位置は図中央の一般的な副鏡セルセルの位置付近としました。 そして、これでも特に問題なく調整・運用ができています。
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結論:副鏡スパイダーは薄くても幅が十分に広ければたわまない構造となる。
4.1.5. 副鏡パイダーによる回折 で述べたように、分解能の観点からスパイダーの厚みは出来るだけ薄くするほうがよく、スパイダーの本数は 4 本がよいと考えられます。 また 4.1.8. スパイダーによる遮蔽 で述べたように集光力の観点からもスパイダーの厚みは出来るだけ薄くするほうがよいと考えられます。 しかし単にスパイダーが薄いと副鏡セルをたわみなく支えることができず、光軸が狂ってしまう恐れがあります。
そこでスパイダーの幅を広くすることを考えます。 スパイダーのたわみ量は二次断面モーメントに比例すると考えられます。 ここで二次断面モーメントは厚さ・幅が途中で変化しない単純な形の副鏡スパイダーの場合、厚さの 1 乗、幅の 3 乗に比例します。 そのため厚さが薄くても幅が十分あればたわみは少ない構造になります。 今回自作する60cmドブソニアンでは出来るだけ厚さの薄い材料で副鏡スパイダーを作り、回折や遮蔽の影響を可能な限り低減させながら、幅を出来るだけ広くしてたわみが出来るだけ発生しないような構造としたいと考えます。
なお副鏡スパイダーの幅が広いと視野周辺では擬似的にスパイダーが太くなっているように見えることになります。ただし自作60cmドブソニアンの場合、実視野は 1 度程度しかないため、仮に副鏡スパイダーの幅が 10 cm あったとしても擬似的に太くなって見える量は 0.87 mm で、ほとんど無視できます。単焦点で視野の広い写真用の鏡筒では影響がわかるかもしれませんが、眼視では問題ないと考えます。
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結論:副鏡セルには何らかの脱落防止機構を設ける。
貼り付け式の副鏡セルを採用する場合、副鏡が脱落する可能性があります。 自作60cmドブソニアン計画で検討している副鏡の場合には、副鏡は短径 5.5 inch = 約 140 mm、長径 7.8 inch = 約 200 mm、重量約 1.23 kg と大きく、重いものとなります。 この副鏡が何らかの理由で脱落し、使用中に主鏡に落ちた場合、確実に主鏡を破損させてしまうと予想されます。 また落下した副鏡自体も破損すると思われます。
そこ副鏡セルには何らかの脱落防止機構を設けることにします。 脱落防止機構によってわずかに星像に影響することも懸念されますが、副鏡が脱落し、副鏡・主鏡を破損させるリスクにはかえられません。
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