M31 アンドロメダ銀河 に引き続いて黒い厚紙を切り抜いて作った自由に動かせる「視野絞り」を使い白紙のコピー用紙にM42をスケッチした。 M42はかなり細かい所まで見えるため倍率を上げて大きくしないとなかなか思ったようにスケッチできない。 今回は 自作60cmドブソニアン に SIPS、Nikon NAV-12.5HW + EiC-H10 の組み合わせで220倍でスケッチしたがトラペジウム付近はもっと倍率が必要と感じた。 一方で全体の広がった様子をスケッチしようとすると倍率を下げて視野を明るくした方が淡い星雲が見やすくなる。 今回は220倍で視野を少しずつずらしてスケッチし、面積としては概ね4視野分、スケッチした範囲としては6~10視野分をつなぎ合わせて約1度×1度の領域をスケッチした。
オリオン台星雲のもっとも明るい領域はやはり中央のトラペジウム周辺(ホイヘンス領域と呼ぶらしい)とM43。 このあたりが特に明るい。 そしてこのあたりを中心に、白く明るく見える散光星雲と暗く抜けた暗黒星雲が複雑に交わる構造が見える。 トラペジウムの東側から入り江のように暗黒星雲が伸びる。この領域はもっと高倍率が必要。 トラペジウムは明るい星が4つ、さらにE、F二つの暗い星も見えたが、やはり倍率が不足でスケッチには描けていない。 複雑な星雲の構造も目で見えても220倍では倍率が低すぎて(細かすぎて)うまくスケッチすることができない。
星雲の北西側はガスが中央から周辺に流れるように幾筋にも分かれているのが分かる。 一方で星雲の南東側はショック面のような、幾重にも重なるシェル状に広がっている。 星雲の西と東で広がり方が異なっているのが面白いと感じた。
M42中心付近から南に伸びる星雲は特に明るく見え、形も特徴的で面白い。 さらにその先で木の枝が広がるように多方向に分岐して広がっているのが分かり、これも特徴的で面白い。
南西の星雲は淡いが確かにそこに大きく広がる淡い星雲があることがわかる。 このあたりは意外と星が少ないが、かえって星雲がそれが星雲の存在を引き立てているように思う。
M42中心付近から北西へも明るい星雲が伸びるがこちら側は南東側に比べると相対的に淡く特徴を掴みにくい。 しかしガスを追っていくと北東から南西に幾筋にも分かれて流れる様子が見えて面白い。
北東側にあるM43も興味深い。 M43の中心は明るい星で、その周辺に特に明るい星雲が見える。 ただし暗黒帯が複雑に入り込み、いくつか切れ込みが入っているのが分かる。 M43全体としては明るい領域が鳥のくちばしのような形をしていて、その中にさらに濃淡があるのがわかる。 M43の東側は暗黒星雲があるようで、いったん暗くなったあとその外で再び淡いガスが広がる。 一方で西側は滑らかにガスが広がって徐々に見えなくなっていきM42に滑らかに接続する。
小三つ星の一番下の星(オリオン座イオタ星)とその周辺の暗い星はNGC1980と呼ばれていてこれは若い散開星団のようだ。 ちょうどこのあたりまでM42の星雲の広がりが見えた。
M42はおそらく北天で一番スケッチが難しい天体だと思うけれど、今回ようやく満足いくスケッチが得られたと思う。 スケッチを描くため2夜合計で5時間50分、M42を見続けたことになる。 220倍と高めの倍率のためか、色は全く分からなかった。 また後で比較したところスケッチで見えていた領域は天体写真では青白く写る領域に対応しているようだ。 天体写真で赤く写っている星雲の形とは異なるようで、やはり眼視ならではの光景だと思う。
M42 | オリオン座 | 散光星雲 | - | 90'x60' | 1760光年 |
M43 | オリオン座 | 散光星雲 | - | 20' | 1760光年 |
NGC1980 | オリオン座 | 散開星団 | - | 14' | 1630光年 |
スケッチ日時 | 2021年12月25日20時50分~23時55分、 2022年1月4日22時00~24時50分(合計5時間50分) |
観測場所 | ハワイ島 マウナロア山 観測所前の駐車場 (海抜3,400m) ハワイ島 ヒロ 自宅(海抜100m) |
使用機材 | 自作60cmドブソニアン + SIPS + EiC-10 + Nikon NAV-12.5HW (220倍, 0.45度) スケッチ範囲は約0.9度×0.9度 |
以前のスケッチ では倍率が低すぎてうまく描けなかったトラペジウム付近をできるだけ倍率を上げてスケッチした。 さらに 広視野スケッチ の技法で高倍率で拡大しつつ、ガスの広がりをできる限り広い範囲で描くことも試みた。
トラペジウム付近はA~Dの4つに加え、E, Fがはっきりと見えた。 G, Hもあるはずだが、これらはスケッチ中はよく分からなかった。
目立つ構造はやはり南東の直線的な星雲の連なり。 いくつかのかたまりに分解でき、それぞれの形も分かる。 暗黒帯と言えるほどではないが、暗い領域が筋となっている。 さらにこの明るい領域の東側にもうっすらとガスは広がる。 コントラストは低いものの、ガスのある領域とガスのない領域があって、これはこれで面白い。
次に目立つのはトラペジウムの北側付近。 トラペジウム付近は明るいガス、その上にいくつか暗黒星雲というか、ぽっかりと黒い穴のように見える領域がいくつかあり、筋状の暗黒帯、また淡いガス、と、構造も明るさも複雑に入り乱れて見える。
トラペジウムの北東は大きな湾のような構造で大きく暗黒帯が広がる。 しかしこの中にも淡いガスの流れがあり、あるものは橋のようで、あるものは中州のように見える。 淡くて境界がはっきりしないが、ここも面白い。
北西から西、南西にかけては淡いガスがある領域とそうではない領域が広がり、いつの間にか淡く視野背景に溶け込んでいく。 不思議とこの領域に星はほとんど見られない。 おそらく星雲が大きく広がっているのだろ、そんなことを思いながらスケッチした。
最後にトラペジウムに戻って、中心付近を注意深く見た。 トラペジウムを囲うように、明るい領域がある。 それら一つ一つの明るい領域は筋や流れがあるような構造に感じた。 そうでない暗い領域も領域も、川や堀といったイメージに感じた。 点と点の集合ではなく、線と線が複雑に絡まり合った、そういったもののように思った。
望遠鏡の倍率は890倍。 スケッチ(用紙)ではこの倍率でようやくトラペジウムが分離して描けるようになる。 描くのは本当に大変で、さらにスケッチでは位置関係が破綻しかけていてちょっとおかしな所もあるけれど、今の自分の実力の限界に近いスケッチが描けたと思う。
M42 | オリオン座 | 散光星雲 | - | 90'x60' | 1760光年 |
スケッチ日時 | 2022年12月24日22時30分~25時40分(3時間10分) |
観測場所 | ハワイ島 ヒロ 自宅(海抜100m) |
使用機材 | 自作60cmドブソニアン + SIPS + Abbe Barlow + XW5 (890倍、0.08度) スケッチ範囲は約0.13度×0.13度 |
M43を中心にオリオン大星雲をスケッチした。 この日はシーイングが良くトラペジウムの周りのガスの流れや構造がよく分かった。 トラペジウムから周辺部にかけて濃いガスから淡いガスが広がる。 全体的には淡いガスが大きく広がっているが、ガスの流れのような構造がたくさん見られた。 M42は西側が特に濃いように感じた。 またM43の東に淡いガスの領域があるように感じた。
M43 | オリオン座 | 散光星雲 | 8等 | 12' | 1400光年 |
M42 | オリオン座 | 散光星雲 | 3.5等 | 40' | 1400光年 |
スケッチ終了日時 | 2011年11月23日27時15分 |
観測場所 | 東北大学天文同好会安達観測所 |
使用機材 | 自作40cmドブソニアン + バーダーUHC-Sフィルター + パラコア + Nagler Type4 22mm (95倍, 0.85度) |
有名なオリオン大星雲。 非常に大きく、明るい。 中央の明るい4つの星がトラペジウム。 星雲全体は視野からはみ出して見えたが、細かい模様を見る為にはある程度倍率が必要に感じた。 暗いガスをどこまで描こうかずいぶん悩み、結果、特に明るい特徴だけを描くことにした。 しかし鉛筆の跡が見えてしまったり、あまりうまく描けていない。
M42 | オリオン座 | 散光星雲 | 3.5等 | 40' | 1400光年 |
M43 | オリオン座 | 散光星雲 | 8等 | 12' | 1400光年 |
スケッチ終了日時 | 2007年10月23日27時50分 |
観測場所 | 東北大学天文同好会安達観測所 |
使用機材 | 自作40cmドブソニアン + パラコア + Nagler Type4 22mm (95倍, 0.85度) |
オリオン大星雲は2回目のスケッチだが、なにか不安なような気がする。 星は、だいたいこのようだが、星雲は少し怪しい。
(補足) 口径6cmのガイド鏡を使って小三つ星全体をスケッチ。 天頂プリズムを使っていたようで、左右反転させて正立像に直したところそれなりに星図と対応する位置に星が描けていることがわかった。 きっと星雲はもっと見えていたけれど技術がなくて描けず、中心の明るい領域だけを描いたのだと思われる。
M42 | オリオン座 | 散光星雲 | 3.5等 | 40' | 1400光年 |
M43 | オリオン座 | 散光星雲 | 8等 | 12' | 1400光年 |
スケッチ終了日時 | 1998年2月22日21時50分 |
観測場所 | 自宅裏(岡山県倉敷市) |
使用機材 | 誠報社オリジナル6cmガイド鏡 + 天頂プリズム + Vixen K.20 (21倍, 2.1度) |
少々星の明るさにバラツキがあるが、そう間違っていない。 今日は星がきれいだ。
(補足)初めての天体スケッチ。 当時は小学6年生。 M42の中心部のみ、トラペジウムとそのすぐ南東のθ2(明るい3つの星)付近の星雲を口径20cm、40倍でスケッチしたようだ。 おそらくはM42の明るい領域だけに集中してスケッチしたのだろうと思う。 M42の広がった淡い領域やM43は全く描いていないようだ。
M42 | オリオン座 | 散光星雲 | 3.5等 | 40' | 1400光年 |
スケッチ終了日時 | 1997年12月31日20時15分 |
観測場所 | 自宅裏(岡山県倉敷市) |
使用機材 | R200SS + Vixen K.20 (40倍,1.1度、スケッチ範囲は約0.7度) |