これまで検討してきた 自作60cmドブソニアン計画の目的、自作40cmドブソニアンから得られた経験、概念設計、詳細設計 に基づいて総合的に勘案し、自作60cmドブソニアン計画で製作する望遠鏡の仕様を決定しました。 最後は「エイヤ」で決めました。(誰も決めてくれません。)
なお本当であれば仕様は製作前に決定して変更しないものだと思いますが、製作後に多くの不具合が見つかり、仕様を変更した方が良いことがわかったたため、仕様も随時更新しています。
自作60cmドブソニアン計画の達成度を定量的に評価するため、以下の2項目を計画の達成度の評価基準として設定します。 大口径の望遠鏡によって観望・スケッチを行うモチベーションを上げ、どれだけ継続して新しい経験が得られたかを定量化します。
評価基準 | 要求仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|
観望回数 | 年間10回以上 | >7.9回/年(2016~2023年の平均) | B |
スケッチ枚数 | 年間15枚以上 | 19.4枚/年(2016年~2023年の平均) | S |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 仕様を満たさない
詳細設計 の 1. 光学系 および 2. 主鏡 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の主鏡として以下の仕様を設定します。 製作は Lockwood Custom Optics に依頼しました(2014年9月)。
総評:2016年3月に受領した60cm Supremax鏡には非点収差があり、また温度順応も時間がかかることがわかったため主鏡を交換しました。 2020年3月に受領した60cm Fused Quartz鏡には有意な非点収差なし、温度順応も約40分で完了しました。 よって主鏡は期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
物理口径 | 26" 以下で出来るだけ大きく | 609. 6mm +/- 0.5mm (24.0" +/- 0.02") | 旧: 610mm +/- 0.5mm | A |
新: 609.5mm +/- 0.5mm | A | |||
光学口径 | 出来るだけ物理口径に近く | (指定無し) | 旧: 605mm +/- 0.5mm | A |
新: 605.8mm +/- 0.3mm | A | |||
厚さ | 1.5" 程度 | 38.1mm +/- 2.5mm (1.5" +/- 0.1") | 旧: 37.9mm +/- 0.1mm | A |
新: 40.4mm +/- 0.1mm | A | |||
焦点距離 | 2m 程度 | 旧: 79.2" +/- 1.0" (2011.68mm +/- 25.4mm) | 公称値: 79.6" (2022mm) 実測値: 2024mm +/- 1mm 2016年9月17日測定 | A |
新: 79.6" より短く (2022mm より短く) | 公称値: 77.45" (1967mm) 実測値: 1967mm 2021年10月16日測定 | A | ||
F値 | パラコア2が使用可能なF3以上 | 旧: 3.3 +/- 0.05 | 実測値: 3.35 | A |
新: 3.35 より小さく | 実測値: 3.25 | A | ||
鏡面精度 | 光学系全体でレイリー・リミットを満たす | 副鏡と合計でPV=63nm 以下 (λ/8 以下) | 旧: PV=58.2nm(λ/8.6) 2016年9月17日測定、ただしPV=295nm (0.6λ)相当の非点収差あり | C |
新: PV=61.7nm(λ/8.1) 2021年10月16日測定、有意な非点収差なし | A | |||
波面精度 | 光学系全体でレイリー・リミットを満たす | 副鏡と合計でPV=125nm 以下 (λ/4 以下) | 旧: PV=116.4nm(λ/4.3) 2016年9月17日測定、ただしPV=590nm (1.2λ)相当の非点収差あり | C |
新: PV=123.4nm(λ/4.1) 2021年10月16日測定、有意な非点収差なし | A | |||
鏡材 | 出来るだけ低膨張率で短時間で温度に順応 | 旧: Supremax | (検証不可) ただし温度順応に約2時間必要、おそらくSupremaxで正しい | C* |
新: Fused Quartz | (検証不可) ただし温度順応は40分程度で完了、Fused Quartzで間違いない | A | ||
重量 | 25kg 以下で出来るだけ軽く | 21.0kg +/- 1.4kg | 旧: 21.0kg +/- 0.5kg | A |
新: 21.9kg +/- 0.5kg | A | |||
コーティングの種類 | 出来るだけ反射率の高いもの | Enhanced Aluminum | Zambuto: Semi-Enhancement、ただし 反射率 の分光特性からおそらく膜厚λ/2のProtected Aluminumと思われる | C |
Galaxy: メーカー確認済 2層のEnhanced Aluminum | A | |||
反射率 | できるだけ高く | 波長500nmで96%程度以上 | Zambuto: 波長500nmで 89% 2018年1月5日測定 | C |
Galaxy: 波長500nmで 87% 2020年1月22日測定→再コーティングを依頼 | C | |||
Galaxy: 波長500nmで 94% 2020年3月3日測定 | A | |||
コーティングの耐久性 | 出来るだけ高いもの | (指定無し) | Zambuto:(未検証) | - |
イオンアシスト蒸着 | Galaxy: メーカー確認済 ピンホールが少ないこと、John Hudekの回答からイオンアシスト蒸着で間違いなし | A | ||
再コーティング可能性 | 再コーティングが可能な事 | (指定無し) | Zambuto:(未検証) | - |
Galaxy: 2020年2月 Galaxy Optics で再コーティング、有意な不具合なし | A |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 3. 主鏡セル で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の主鏡セルとして以下の仕様を設定します。 主鏡セルは自作することにしました。
総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
裏面支持方法 | できるだけ鏡面誤差を発生させない | Plopで計算した最適な位置での18点支持 | 有意な不具合なし | A |
裏面支持のモーメントの釣り合い | 裏面支持機構でモーメントを発生させない | バランスが合うようおもりを追加、モーメントをゼロにする | 有意な不具合なし | A |
バランスが合う位置が支点となるように作り直し、モーメントをゼロにする | 有意な不具合なし、 -1.3kgの軽量化 | A | ||
裏面支持点の摩擦 | 摩擦係数が小さい材質を支持点に使用 | テフロンの使用 | 非点収差の原因? →変更しても変化無し | A |
摩擦係数が小さく異方性の小さい物質を使用 | デルリンの使用 | 変化なし →非点収差の原因は裏面支持の摩擦ではない | A | |
側面支持方法 | できるだけ鏡面誤差を発生させない | 45度離れた円周上の4点を支持 | 金属ベアリングを使用、非点収差の原因? | B |
ウレタン製ベアリングを使用、若干改善あり | A | |||
180度円周をワイヤーで支持 | 変化なし →非点収差の原因は側面支持方法ではない | B | ||
側面支持点の位置精度 | できるだけ鏡面誤差を発生させない | 重心位置=裏面から 16.3mm +/-0.8mm で支持 | +2.0mm ~ +3.4mm →非点収差の原因? | C |
-1.6mm ~ -0.2mm に調整 → 若干改善あり | A | |||
-0.5mm ~ +0.4mm に調整 → 特に変化なし | A | |||
セル全体の構造 | 光軸調整によって鏡面誤差を発生させない | ゆりかご式(1" 鉄角パイプ溶接) | 有意な不具合なし | A |
セル全体のたわみ | 光軸に影響を与えない | 1" 鉄角パイプ溶接 | 有意な光軸ズレなし | A |
脱落防止 | 主鏡が脱落しないような構造を設置 | 主鏡前方に4カ所設置、金属製で小さく製作、遮蔽が最小になるようにする | 適切に機能、ただし主鏡にカケを作りそうで危険 | C* |
主鏡前方に4カ所設置、プラスチック製 | 適切に機能、安心して運用可能 | A | ||
光軸調整 | 接眼部を覗きながら主鏡光軸の調整が可能 | モーター2個を用いた光軸調整 | 非常に快適、期待以上 | S |
トラス棒との接続 | できるだけ高剛性な構造で光軸に影響を与えない | ゆりかご式のフレーム(1" 鉄角パイプ溶接)に直接接続 | 6本トラスに起因する剛性不足、不可 | C* |
ミラーボックスに接続 | 有意な不具合なし | A | ||
望遠鏡の組み立て | 高度軸を取り外し可能にするための機構を主鏡セルに備える | 主鏡セルにジャッキを組み込む | うまく機能しない | C* |
高度軸を取り外し可能にするための機構をロッカーボックスに備える | ロッカーボックスにつっかえ棒を入れる穴を用意 | うまく機能、シンプルで十分機能する | S | |
重量 | できるだけ軽く | 主鏡セル単独で10.5kg程度、主鏡・ミラーボックス合計で40kg未満 | 主鏡セル単独: 12.6kg、主鏡(旧)・ミラーボックス合計: 37.3kg | B |
主鏡セル単独: 12.6kg、主鏡(新)・ミラーボックス合計: 38.4kg | B | |||
シーソーの重心位置を改良して軽量化、主鏡セル単独: 11.3kg、主鏡・ミラーボックス合計: 37.0 kg | B | |||
三角板をアルミ板に変更して軽量化、主鏡セル単独: 10.7kg、主鏡(新)・ミラーボックス合計: 37.6 kg | A |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 4. ミラーボックス で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画のミラーボックスとして以下の仕様を設定します。 ミラーボックスは自作しました。
総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
構造 | 主鏡破損のリスクを最小化することを最優先とする | 主鏡一体式 | 主鏡一体式で製作、不具合なし | A |
役割 | ミラーボックスは主鏡を保護するための箱、強度は不要 | 強度は考慮せずできるだけ軽く製作 | ミラーボックス全体として剛性が不足、不可 | C* |
主鏡セル周辺の剛性を少しでも向上させる構造とする | ミラーボックスにも筋交いを入れる等、できるだけがっちり製作 | 剛性が向上、こっちの方が良い | A | |
重量 | できるだけ軽く | ミラーボックス単独で4kg程度、主鏡・主鏡セル合計で40kg未満 | ミラーボックス単独 3.7kg、主鏡(旧)・主鏡セルとの合計 37.3kg | A |
9mm合板で再製作、ミラーボックス単独 4.3kg、主鏡(新)・主鏡セルとの合計 37.6kg | B | |||
高さ | 出来るだけ低く | 125mm、限界まで低く | 125mm、ただし剛性不足のようだ | C* |
190mm、ロッカーボックスに格納できる最大の高さ | 190 mm、剛性があってこちらの方が良い | A | ||
トラス棒との接続 | できるだけ高剛性な構造で光軸に影響を与えない | 主鏡セルに接続しミラーボックスには接続しない | 6本トラスが原因?剛性不足、不可 | C* |
ミラーボックスに接続 | 有意な不具合なし、こちらの方が良い | A | ||
高度軸との接続 | できるだけ高剛性な構造で光軸に影響を与えない | 主鏡セルに直接接続する | 主鏡セルにM8ネジ3本で固定、不具合なし | A |
迷光対策 | ミラーボックス裏面からの迷光を遮る | 主鏡裏面側にプラスチック段ボールの絞りを設置 | 有効に機能、不具合なし | A |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 5. 副鏡 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の副鏡として以下の仕様を設定します。 副鏡も製作は Lockwood Custom Optics に依頼しました(2014年9月)。 その後、非点収差の問題を検証し、また反射率を改善するため Ostahowski Optics に再研磨・再コーティングを依頼しました(2018年10月)。
総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
ケラれのない視野角 | φ20mm 程度 | 旧: φ15mm | (検証不可) ただし不必要に大きすぎたと思われる | A |
新: φ10mm | ||||
光路引き出し量 | できるだけ少なく | 旧: 406.3mm | 実測値: 400.8mm 鏡筒トラスが長すぎるようだが特に不具合なし | B |
新: 400.0 mm | ||||
物理口径(短径) | できるだけ小さく | 139.7mm +/- 0.5mm (5.5" +/- 0.02") | 140mm | A |
光学口径(短径) | 旧: 138.1mm (5.44") 以上 | (指定無し) | 副鏡セルに貼り付け:(未測定) | - |
副鏡ホルダーに組み込み:短径 136.5mm | B | |||
新: 134.0mm (5.28") 以上 | 136.5mm | 副鏡ホルダーに組み込み:短径 136.5mm | A | |
オフセット量 | 適切な量の副鏡オフセットを与える | 旧: 14.4mm | (未測定)ただし有意な不具合なし | A |
新: 14.3mm | ||||
厚さ | できるだけ薄く | 25.4mm +/- 2.5mm (1.0" +/- 0.1") | 26mm | A |
鏡面精度 | 光学系全体でレイリー・リミットを満たす | 主鏡と合計で63nm PV 以下 (λ/8 以下) | 収差を検知できず 非点収差はおそらく主鏡に起因 | A |
念のため Ostahowski にて再研磨、収差は検知できず、干渉計 で 25nm PV (λ/20) | A | |||
波面精度 | 光学系全体でレイリー・リミットを満たす | 主鏡と合計で125nm PV 以下 (λ/4 以下) | 収差を検知できず 非点収差はおそらく主鏡に起因 | A |
念のため Ostahowski にて再研磨、収差は検知できず、干渉計 で 50nm PV (λ/10) | A | |||
鏡材 | できるだけ低膨張率 | Supremax | (検証不可) ただし温度順応や結露など有意な不具合なし | A |
重量 | できるだけ軽く | 1.23kg +/- 0.1kg | 1.2kg | A |
コーティングの種類 | できるだけ反射率の高いもの | Enhanced Aluminum | Zambuto: Semi-Enhancement、反射率 の分光特性からおそらく Protected Aluminum | C |
Ostahowski: Multi-layer (4) Enhanced Aluminum、反射率 の分光特性からおそらく3層の Enhanced Aluminum | A | |||
反射率 | できるだけ高く | 波長500nmで96%程度以上 | Zambuto: 波長500nmで 89% 2017年3月19日測定 | C |
Ostahowski: 波長500nmで 95% 2018年12月2日測定 | A | |||
コーティングの耐久性 | 出来るだけ高いもの | (指定無し) | Zambuto:(未検証) | - |
イオンアシスト蒸着 | Ostahowski:(未検証) ただし聞くところによるとイオンアシスト蒸着ではなく3層のEhnahced Aluminumとして耐久性を高める設計のようだ | B | ||
再コーティング可能性 | 再コーティングが可能な事 | (指定無し) | Zambuto: 2018年11月、Ostahowski にて再コーティング、有意な不具合なし | A |
Ostahowski:(未検証) | - |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 6. 副鏡 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の副鏡セルとして以下の仕様を設定します。 副鏡セルは自作することにしました。 当初はシリコン貼り付け式で製作しましたが、非点収差の問題の検証のためホルダー式で再製作しました。
総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
支持方法 | できるだけ鏡面誤差を発生させない | 旧: シリコンによる裏面6点の副鏡セルへの貼り付け | 3.1mm厚: 光軸ズレが発生 | C |
0.7mm厚: 有意な光軸ズレは生じない | A | |||
新: 副鏡ホルダーで鏡周を支持 | 有意な不具合なし | A | ||
セルの材質 | できるだけ温度変化で副鏡に応力をかけない | 旧: 熱膨張率が Supremax に近い「合板」を使用 | 有意な不具合なし | A |
新: 鉄製の副鏡ホルダーとポリエステル綿による裏面支持 | 有意な不具合なし | A | ||
セル全体のたわみ | 光軸に影響を与えない | 旧: 合板を重ね合わせてブロック状として剛性を確保 | 有意な光軸ズレなし | A |
新:(ホルダー式の場合、セルのたわみは影響しない) | 有意な不具合なし | A | ||
副鏡遮蔽率 | 出来るだけ小さく | 23% 程度 | 旧: (未検証) | - |
新: 23.6% | A | |||
スパイダーの厚み | 回折を押さえるためできるだけ薄く | 1.3mm(ステンレス) | 有意な不具合なし | A |
スパイダーの幅 | 剛性を確保するためできるだけ広く | 75mm(長方形) | 有意な不具合なし、ただし丈夫に作りすぎた、重い | B |
75~37.5mm(台形) 肉抜き軽量化 | 有意な不具合なし | A | ||
脱落防止 | 副鏡が脱落しないような安全策を講じる | (設計に盛り込まず) | 脱落防止なし、危険、不可 | C |
副鏡ホルダーによる鏡周支持 | 適切に機能、ただしホルダーに入れる際にぶつけて副鏡にカケが生じてしまった | A | ||
光軸調整 | 容易に副鏡光軸の調整が可能 | モーター2個を用いた光軸調整 | スペース不足、実現できず | C* |
3本の光軸ネジを六角レンチで回す | 若干手間だがこれで妥協 | B | ||
副鏡セルの支点 | 副鏡の位置が光軸調整でズレない | できるだけ鏡面の近くを支点にする | 旧: 鏡面から55mm、有意な不具合なし | A |
新: 鏡面から90mm、これでも有意な不具合なし、この仕様は設定しなくても良かったように思う | B* |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 7. 接眼部 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の接眼部として以下の仕様を設定します。 接眼部は Starlight Instruments の2インチ Feather Touch Focuser "FTF2015BCR" に Tele Vue の Paracorr Type-2 (2インチ) を組み込んだ Starlight Integrated Paracorr System (SIPS) を採用しました。
総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
大きさ | 必要十分な大きさの接眼部を採用 | 2インチ接眼部 | 2インチ接眼部、2インチで必要十分 | A |
微調整 | 滑らかにピントを微調整できる | 滑らかに動くデュアルスピードフォーカサーを採用 | ノブ1回転20mm、減速比10倍 | A |
調整範囲 | 様々なアイピースに対応できる | ピント調整範囲: -9.9~+29.5mm、移動量: 39.4mm以上 | 調整範囲: -13.1~+27.4mm、移動量: 40.5mm | A |
誤差 | センタリング誤差や傾き誤差を生じない | Starlight Integrated Paracorr System (SIPS)、Parallizer を使用して誤差を最小にする | 自然な操作感で光軸ズレを全く知覚しない | S |
傾き調整 | 接眼部の傾き調整が可能 | 純正のレベリングベースを使用する | BA20FL を使用、有意な不具合なし | A |
取り付け角度 | ドブを直感的に操作できる | 大型ドブの作例に倣って水平に取り付け | 姿勢がきつい、不可 | C* |
楽な姿勢でアイピースを覗ける | 少し上向きに接眼部を取り付ける | 22.5°上向きに取り付け、非常に快適、効果絶大 | S |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 8. トップケージ で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画のトップケージとして以下の仕様を設定します。
総評:概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
構造 | 副鏡を安全に収納できること | トップケージ式を採用 | トップケージ式で製作、有意な不具合なし | A |
幅 | 副鏡を収納できる最低限の幅(高さ)とする | 幅狭トップケージとする | 幅(高さ)298mm、不具合なし | A |
たわみ | 光軸ズレが発生しない | t=4.8mmの Birch 合板を3枚(天側)または4枚(地側)重ねて製作 | 光軸ズレの原因はここではなかったが剛性アップのため再製作 | B |
天側地側ともt=18mmの Baltic Birch 合板で製作 | 剛性感が向上、不具合なし | A | ||
剛性 | 出来るだけ高剛性 | (指定なし) | 当初光軸ズレの原因がトップケージにあると疑ったがトップケージは特に問題なかった | A |
扱いやすさ | 脚立なしで組み立て可能 | (指定なし) | 立つ位置を工夫すればギリギリ載せられる | A |
工具なしで組み立て可能 | 6本自作トラス金具ではノブスターを使い工具レスとする | 工具なしだが組み立てにくい | C | |
8本トラス金具では Aurora Precision 社の金具を使用、工具レスとする | 工具なし、組み立ても容易 | A | ||
重量 | 出来るだけ軽く | (指定無し) | 8.3 kg(アイピース、ファインダー、遮光板を含まず) | A |
迷光対策 | 接眼部の反対側から迷光が直接入射しない | 風に煽られるのを防ぐためシュラウドは使用しない | シュラウドなしでも特に問題なし | A |
光路中に遮蔽板(バッフル)を設置する | 星像が面白くない、不可 | C | ||
接眼部の反対側に遮蔽板(フード)を設置する | 強風でも特に問題なし | A |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 9. 鏡筒トラス で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の鏡筒トラスとして以下の仕様を設定します。 鏡筒トラスはその金具も含めて当初は自作しましたが、 光軸ズレの問題や振動の問題から Aurora Precision 社の金具を使用することにしました。 またトラス棒の直径も 1" から 1.5" へ太くしました。
総評:不具合は解消し、概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
たわみ | 光軸ズレが発生しない | 直径1"、6本トラス、トラスの支点を一致させる、自作トラス金具 | 最大8mmの光軸ズレ | C* |
直径1"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具 | 最大1mmの光軸ズレ | B | ||
直径1.5"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具 | 最大1mmの光軸ズレ | B | ||
剛性 | 出来るだけ高剛性 | 直径1"、6本トラス、トラスの支点を一致させる | 固有振動数2.6Hz | C* |
直径1"、6本トラス、トラス金具を高剛性に改良 | 固有振動数3Hz | C* | ||
直径1"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具 | 固有振動数5.1Hz | B | ||
直径1.5"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具 | 固有振動数6Hz | A | ||
組み立てやすさ | トラス本数を減らして組み立て時間を短縮 | 6本 | 6本トラスだとトップケージの取り付けが大変、逆に時間がかかる | C* |
8本トラスに仕様を変更 | こちらの方が組み立てやすい、満足 | A | ||
調整しやすさ | トップケージ位置をトラス棒の長さだけで調整 | スチュワートプラットフォームの原理を採用 | 調整が逆に困難 | C* |
Aurora Precision 製のトラス金具、加工精度で合わせて調整は行わない | この仕様が正解、不具合なし | A | ||
重量 | 出来るだけ軽く | (指定無し) | 3.5kg(直径1"、6本トラス) | A |
3.2kg(直径1"、8本トラス) | A | |||
旧: 5.3kg(直径1.5"、8本トラス) | B | |||
新: 5.3kg(直径1.5"、8本トラス) | B | |||
長さ | 出来るだけ短く | (指定無し) | 1571mm(直径1"、6本トラス) | B |
1487mm(直径1"、8本トラス) | A | |||
旧: 1498mm(直径1.5"、8本トラス) | A | |||
新: 1453mm(直径1.5"、8本トラス、主鏡交換に合わせて短縮) | A | |||
トラスの構造 | 鏡筒のたわみを最小とする | 軽量化・単純化のためセルリエトラスは採用しない | 有意な不具合なし | A |
迷光対策 | 鏡筒トラス部分で迷光を生じない | 風による振動発生や動鏡の暴走を防ぐためシュラウド(トラスカバー)は使用しない | 有意な不具合なし | A |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 10. 高度軸・水平軸 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の高度軸・水平軸として以下の仕様を設定します。 高度軸・水平軸は自作することにしました。
総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。 ただし高度軸を補強すると鏡筒の固有振動数が最大で13Hzまで増加できると予想されるため、改良を検討中。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
軸受けの材質 | 静止摩擦係数と動摩擦係数の差が小さく、値も小さい材質 | テフロン+FRP | 静止摩擦係数0.10、動摩擦係数0.093、有意な不具合なし | A |
軸受けの面積 | 面積は摩擦と無関係、小さくても良い | 圧力2.9kg/cm2 | パッドが削れ、動き始めもリニアでない、不可 | C* |
圧力が一定値以下となるよう面積も考慮する | 圧力1.3kg/cm2 | この圧力なら削れない、これで問題なし | A | |
高度軸回転に必要な力 | 2~4kgfとなるよう設計 | 高度軸直径φ920mm | 筒先で上方向1.9kgf、下方向1.7kgf、@EL=45°これで問題なし | B |
高度軸の重量 | 出来るだけ軽く | (指定無し) | 左右で4.3kg、ただし補強に1.6kg必要、合計5.9kg | A |
水平軸回転に必要な力 | 2~4kgfとなるよう設計 | 水平軸直径φ730mm | 筒先で3.3kgf @EL=60° | A |
水平回転の出っ張り | バックラッシュのないスムーズな水平回転ができる | 「出っ張り」をミラーボックスに取り付ける | 有効に機能、期待以上 | S |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)
詳細設計 の 11. ロッカーボックス で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画のロッカーボックスとして以下の仕様を設定します。
総評:概ね期待通りの性能を有する。
検討項目 | 要求仕様 | 製作仕様 | 実測結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
構造 | 高剛性な構造とする | 側面は4面で「ロの字」とする(コの字としない) | ロの字型で製作、高い剛性感が得られた | A |
底面 | 軽量化のため必要最低限とする | t=4.8mmの Birch 合板を4枚貼り合わせて製作 | 固有振動数 の測定からここの剛性不足が判明 | C* |
剛性のため底面の板厚は重要 | 上記にt=18mmの Baltic Birch 合板を張り付け | 固有振動数6.1Hz→8.2Hz、効果絶大 | S | |
高さ | 軽量化・高剛性のためできるだけ低く | (指定なし) | 地上高294mm(グランドボード含む) | A |
重量 | 出来るだけ軽く | (指定無し) | 15.1 kg(底面の補強前) | A |
22.5 kg(補強後) 重いのは不満だが高剛性の方が重要、受容 | B | |||
望遠鏡の組み立て | 高度軸を取り外し可能にするための機構を主鏡セルに備える | 主鏡セルにジャッキを組み込む | うまく機能しない | C* |
高度軸を取り外し可能にするための機構をロッカーボックスに備える | ロッカーボックスにつっかえ棒を入れる穴を用意 | うまく機能、シンプルで十分機能する | S |
判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)