これまで検討してきた 自作60cmドブソニアン計画の目的自作40cmドブソニアンから得られた経験概念設計詳細設計 に基づいて総合的に勘案し、自作60cmドブソニアン計画で製作する望遠鏡の仕様を決定しました。 最後は「エイヤ」で決めました。(誰も決めてくれません。)

なお本当であれば仕様は製作前に決定して変更しないものだと思いますが、製作後に多くの不具合が見つかり、仕様を変更した方が良いことがわかったたため、仕様も随時更新しています。

  1. 計画の達成度
  2. 主鏡
  3. 主鏡セル
  4. ミラーボックス
  5. 副鏡
  6. 副鏡セル
  7. 接眼部
  8. トップケージ
  9. 鏡筒トラス
  10. 高度軸・水平軸
  11. ロッカーボックス

1. 計画の達成度

自作60cmドブソニアン計画の達成度を定量的に評価するため、以下の2項目を計画の達成度の評価基準として設定します。 大口径の望遠鏡によって観望・スケッチを行うモチベーションを上げ、どれだけ継続して新しい経験が得られたかを定量化します。

自作60cmドブソニアンの計画の達成度
評価基準要求仕様実測結果判定
観望回数年間10回以上観望回数を数えていないが仕様は達成していると思われるA
スケッチ枚数年間15枚以上19.4枚/年(2023年11月現在)S

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 仕様を満たさない

スケッチ枚数の推移
スケッチ枚数の推移

2. 主鏡

詳細設計1. 光学系 および 2. 主鏡 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の主鏡として以下の仕様を設定します。 製作は Lockwood Custom Optics に依頼しました(2014年9月)。

総評:2016年3月に受領した60cm Supremax鏡には非点収差があり、また温度順応も時間がかかることがわかったため主鏡を交換しました。 2020年3月に受領した60cm Fused Quartz鏡には有意な非点収差なし、温度順応も約40分で完了しました。 よって主鏡は期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンの主鏡の仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
物理口径26" 以下で出来るだけ大きく609. 6mm +/- 0.5mm
(24.0" +/- 0.02")
旧: 610mm +/- 0.5mmA
新: 609.5mm +/- 0.5mmA
光学口径出来るだけ物理口径に近く(指定無し)旧: 605mm +/- 0.5mmA
新: 605.8mm +/- 0.3mmA
厚さ1.5" 程度38.1mm +/- 2.5mm
(1.5" +/- 0.1")
旧: 37.9mm +/- 0.1mmA
新: 40.4mm +/- 0.1mmA
焦点距離2m 程度旧: 79.2" +/- 1.0"
(2011.68mm +/- 25.4mm)
公称値: 79.6" (2022mm)
実測値: 2024mm +/- 1mm
2016年9月17日測定
A
新: 79.6" より短く
(2022mm より短く)
公称値: 77.45" (1967mm)
実測値: 1967mm
2021年10月16日測定
A
F値パラコア2が使用可能なF3以上旧: 3.3 +/- 0.05実測値: 3.35A
新: 3.35 より小さく実測値: 3.25A
鏡面精度光学系全体でレイリー・リミットを満たす副鏡と合計でPV=63nm 以下 (λ/8 以下)旧: PV=58.2nm(λ/8.6)
2016年9月17日測定、ただしPV=295nm (0.6λ)相当の非点収差あり
C
新: PV=61.7nm(λ/8.1)
2021年10月16日測定、有意な非点収差なし
A
波面精度光学系全体でレイリー・リミットを満たす副鏡と合計でPV=125nm 以下 (λ/4 以下)旧: PV=116.4nm(λ/4.3)
2016年9月17日測定、ただしPV=590nm (1.2λ)相当の非点収差あり
C
新: PV=123.4nm(λ/4.1)
2021年10月16日測定、有意な非点収差なし
A
鏡材出来るだけ低膨張率で短時間で温度に順応旧: Supremax(検証不可)
ただし温度順応に約2時間必要、おそらくSupremaxで正しい
C*
新: Fused Quartz(検証不可)
ただし温度順応は40分程度で完了、Fused Quartzで間違いない
A
重量25kg 以下で出来るだけ軽く21.0kg +/- 1.4kg旧: 21.0kg +/- 0.5kgA
新: 21.9kg +/- 0.5kgA
コーティングの種類出来るだけ反射率の高いものEnhanced AluminumZambuto: Semi-Enhancement、ただし 反射率 の分光特性からおそらく膜厚λ/2のProtected Aluminumと思われるC
Galaxy: メーカー確認済
2層のEnhanced Aluminum
A
反射率できるだけ高く波長500nmで96%程度以上Zambuto: 波長500nmで 89%
2018年1月5日測定
C
Galaxy: 波長500nmで 87%
2020年1月22日測定→再コーティングを依頼
C
Galaxy: 波長500nmで 94%
2020年3月3日測定
A
コーティングの耐久性出来るだけ高いもの(指定無し)Zambuto:(未検証)-
イオンアシスト蒸着Galaxy: メーカー確認済
ピンホールが少ないこと、John Hudekの回答からイオンアシスト蒸着で間違いなし
A
再コーティング可能性再コーティングが可能な事(指定無し)Zambuto:(未検証)-
Galaxy: 2020年2月 Galaxy Optics で再コーティング、有意な不具合なしA

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

3. 主鏡セル

詳細設計3. 主鏡セル で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の主鏡セルとして以下の仕様を設定します。 主鏡セルは自作することにしました。

総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンの主鏡セルの仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
裏面支持方法できるだけ鏡面誤差を発生させないPlopで計算した最適な位置での18点支持有意な不具合なしA
裏面支持のモーメントの釣り合い裏面支持機構でモーメントを発生させないバランスが合うようおもりを追加、モーメントをゼロにする有意な不具合なしA
バランスが合う位置が支点となるように作り直し、モーメントをゼロにする有意な不具合なし、 -1.3kgの軽量化A
裏面支持点の摩擦摩擦係数が小さい材質を支持点に使用テフロンの使用非点収差の原因?
→変更しても変化無し
A
摩擦係数が小さく異方性の小さい物質を使用デルリンの使用変化なし
→非点収差の原因は裏面支持の摩擦ではない
A
側面支持方法できるだけ鏡面誤差を発生させない45度離れた円周上の4点を支持金属ベアリングを使用、非点収差の原因?B
ウレタン製ベアリングを使用、若干改善ありA
180度円周をワイヤーで支持変化なし
→非点収差の原因は側面支持方法ではない
B
側面支持点の位置精度できるだけ鏡面誤差を発生させない重心位置=裏面から 16.3mm +/-0.8mm で支持+2.0mm ~ +3.4mm
→非点収差の原因?
C
-1.6mm ~ -0.2mm に調整 → 若干改善ありA
-0.5mm ~ +0.4mm に調整 → 特に変化なしA
セル全体の構造光軸調整によって鏡面誤差を発生させないゆりかご式(1" 鉄角パイプ溶接)有意な不具合なしA
セル全体のたわみ光軸に影響を与えない1" 鉄角パイプ溶接有意な光軸ズレなしA
脱落防止主鏡が脱落しないような構造を設置主鏡前方に4カ所設置、金属製で小さく製作、遮蔽が最小になるようにする適切に機能、ただし主鏡にカケを作りそうで危険C*
主鏡前方に4カ所設置、プラスチック製適切に機能、安心して運用可能A
光軸調整接眼部を覗きながら主鏡光軸の調整が可能モーター2個を用いた光軸調整非常に快適、期待以上S
トラス棒との接続できるだけ高剛性な構造で光軸に影響を与えないゆりかご式のフレーム(1" 鉄角パイプ溶接)に直接接続6本トラスに起因する剛性不足、不可C*
ミラーボックスに接続有意な不具合なしA
望遠鏡の組み立て高度軸を取り外し可能にするための機構を主鏡セルに備える主鏡セルにジャッキを組み込むうまく機能しないC*
高度軸を取り外し可能にするための機構をロッカーボックスに備えるロッカーボックスにつっかえ棒を入れる穴を用意うまく機能、シンプルで十分機能するS
重量できるだけ軽く主鏡セル単独で10.5kg程度、主鏡・ミラーボックス合計で40kg未満主鏡セル単独: 12.6kg、主鏡(旧)・ミラーボックス合計: 37.3kgB
主鏡セル単独: 12.6kg、主鏡(新)・ミラーボックス合計: 38.4kgB
シーソーの重心位置を改良して軽量化、主鏡セル単独: 11.3kg、主鏡・ミラーボックス合計: 37.0 kgB
三角板をアルミ板に変更して軽量化、主鏡セル単独: 10.7kg、主鏡(新)・ミラーボックス合計: 37.6 kgA

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

4. ミラーボックス

詳細設計4. ミラーボックス で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画のミラーボックスとして以下の仕様を設定します。 ミラーボックスは自作しました。

総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンのミラーボックスの仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
構造主鏡破損のリスクを最小化することを最優先とする主鏡一体式主鏡一体式で製作、不具合なしA
役割ミラーボックスは主鏡を保護するための箱、強度は不要強度は考慮せずできるだけ軽く製作ミラーボックス全体として剛性が不足、不可C*
主鏡セル周辺の剛性を少しでも向上させる構造とするミラーボックスにも筋交いを入れる等、できるだけがっちり製作剛性が向上、こっちの方が良いA
重量できるだけ軽くミラーボックス単独で4kg程度、主鏡・主鏡セル合計で40kg未満ミラーボックス単独 3.7kg、主鏡(旧)・主鏡セルとの合計 37.3kgA
9mm合板で再製作、ミラーボックス単独 4.3kg、主鏡(新)・主鏡セルとの合計 37.6kgB
高さ出来るだけ低く125mm、限界まで低く125mm、ただし剛性不足のようだC*
190mm、ロッカーボックスに格納できる最大の高さ190 mm、剛性があってこちらの方が良いA
トラス棒との接続できるだけ高剛性な構造で光軸に影響を与えない主鏡セルに接続しミラーボックスには接続しない6本トラスが原因?剛性不足、不可C*
ミラーボックスに接続有意な不具合なし、こちらの方が良いA
高度軸との接続できるだけ高剛性な構造で光軸に影響を与えない主鏡セルに直接接続する主鏡セルにM8ネジ3本で固定、不具合なしA
迷光対策ミラーボックス裏面からの迷光を遮る主鏡裏面側にプラスチック段ボールの絞りを設置有効に機能、不具合なしA

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

5. 副鏡

詳細設計5. 副鏡 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の副鏡として以下の仕様を設定します。 副鏡も製作は Lockwood Custom Optics に依頼しました(2014年9月)。 その後、非点収差の問題を検証し、また反射率を改善するため Ostahowski Optics に再研磨・再コーティングを依頼しました(2018年10月)。

総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンの副鏡の仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
ケラれのない視野角φ20mm 程度旧: φ15mm(検証不可)
ただし不必要に大きすぎたと思われる
A
新: φ10mm
光路引き出し量できるだけ少なく旧: 406.3mm実測値: 400.8mm
鏡筒トラスが長すぎるようだが特に不具合なし
B
新: 400.0 mm
物理口径(短径)できるだけ小さく139.7mm +/- 0.5mm
(5.5" +/- 0.02")
140mmA
光学口径(短径)旧: 138.1mm (5.44") 以上(指定無し)副鏡セルに貼り付け:(未測定)-
副鏡ホルダーに組み込み:短径 136.5mmB
新: 134.0mm (5.28") 以上136.5mm副鏡ホルダーに組み込み:短径 136.5mmA
オフセット量適切な量の副鏡オフセットを与える旧: 14.4mm(未測定)ただし有意な不具合なしA
新: 14.3mm
厚さできるだけ薄く25.4mm +/- 2.5mm
(1.0" +/- 0.1")
26mmA
鏡面精度光学系全体でレイリー・リミットを満たす主鏡と合計で63nm PV 以下 (λ/8 以下)収差を検知できず
非点収差はおそらく主鏡に起因
A
念のため Ostahowski にて再研磨、収差は検知できず、干渉計 で 25nm PV (λ/20)A
波面精度光学系全体でレイリー・リミットを満たす主鏡と合計で125nm PV 以下 (λ/4 以下)収差を検知できず
非点収差はおそらく主鏡に起因
A
念のため Ostahowski にて再研磨、収差は検知できず、干渉計 で 50nm PV (λ/10)A
鏡材できるだけ低膨張率Supremax(検証不可)
ただし温度順応や結露など有意な不具合なし
A
重量できるだけ軽く1.23kg +/- 0.1kg1.2kgA
コーティングの種類できるだけ反射率の高いものEnhanced AluminumZambuto: Semi-Enhancement、反射率 の分光特性からおそらく Protected AluminumC
Ostahowski: Multi-layer (4) Enhanced Aluminum、反射率 の分光特性からおそらく3層の Enhanced AluminumA
反射率できるだけ高く波長500nmで96%程度以上Zambuto: 波長500nmで 89%
2017年3月19日測定
C
Ostahowski: 波長500nmで 95%
2018年12月2日測定
A
コーティングの耐久性出来るだけ高いもの(指定無し)Zambuto:(未検証)-
イオンアシスト蒸着Ostahowski:(未検証)
ただし聞くところによるとイオンアシスト蒸着ではなく3層のEhnahced Aluminumとして耐久性を高める設計のようだ
B
再コーティング可能性再コーティングが可能な事(指定無し)Zambuto: 2018年11月、Ostahowski にて再コーティング、有意な不具合なしA
Ostahowski:(未検証)-

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

6. 副鏡セル

詳細設計6. 副鏡 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の副鏡セルとして以下の仕様を設定します。 副鏡セルは自作することにしました。 当初はシリコン貼り付け式で製作しましたが、非点収差の問題の検証のためホルダー式で再製作しました。

総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンの副鏡セルの仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
支持方法できるだけ鏡面誤差を発生させない旧: シリコンによる裏面6点の副鏡セルへの貼り付け3.1mm厚: 光軸ズレが発生C
0.7mm厚: 有意な光軸ズレは生じないA
新: 副鏡ホルダーで鏡周を支持有意な不具合なしA
セルの材質できるだけ温度変化で副鏡に応力をかけない旧: 熱膨張率が Supremax に近い「合板」を使用有意な不具合なしA
新: 鉄製の副鏡ホルダーとポリエステル綿による裏面支持有意な不具合なしA
セル全体のたわみ光軸に影響を与えない旧: 合板を重ね合わせてブロック状として剛性を確保有意な光軸ズレなしA
新:(ホルダー式の場合、セルのたわみは影響しない)有意な不具合なしA
副鏡遮蔽率出来るだけ小さく23% 程度旧: (未検証)-
新: 23.6%A
スパイダーの厚み回折を押さえるためできるだけ薄く1.3mm(ステンレス)有意な不具合なしA
スパイダーの幅剛性を確保するためできるだけ広く75mm(長方形)有意な不具合なし、ただし丈夫に作りすぎた、重いB
75~37.5mm(台形)
肉抜き軽量化
有意な不具合なしA
脱落防止副鏡が脱落しないような安全策を講じる(設計に盛り込まず)脱落防止なし、危険、不可C
副鏡ホルダーによる鏡周支持適切に機能、ただしホルダーに入れる際にぶつけて副鏡にカケが生じてしまったA
光軸調整容易に副鏡光軸の調整が可能モーター2個を用いた光軸調整スペース不足、実現できずC*
3本の光軸ネジを六角レンチで回す若干手間だがこれで妥協B
副鏡セルの支点副鏡の位置が光軸調整でズレないできるだけ鏡面の近くを支点にする旧: 鏡面から55mm、有意な不具合なしA
新: 鏡面から90mm、これでも有意な不具合なし、この仕様は設定しなくても良かったように思うB*

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

7. 接眼部

詳細設計7. 接眼部 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の接眼部として以下の仕様を設定します。 接眼部は Starlight Instruments の2インチ Feather Touch Focuser "FTF2015BCR" に Tele Vue の Paracorr Type-2 (2インチ) を組み込んだ Starlight Integrated Paracorr System (SIPS) を採用しました。

総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンの接眼部の仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
大きさ必要十分な大きさの接眼部を採用2インチ接眼部2インチ接眼部、2インチで必要十分A
微調整滑らかにピントを微調整できる滑らかに動くデュアルスピードフォーカサーを採用ノブ1回転20mm、減速比10倍A
調整範囲様々なアイピースに対応できるピント調整範囲: -9.9~+29.5mm、移動量: 39.4mm以上調整範囲: -13.1~+27.4mm、移動量: 40.5mmA
誤差センタリング誤差や傾き誤差を生じないStarlight Integrated Paracorr System (SIPS)Parallizer を使用して誤差を最小にする自然な操作感で光軸ズレを全く知覚しないS
傾き調整接眼部の傾き調整が可能純正のレベリングベースを使用するBA20FL を使用、有意な不具合なしA
取り付け角度ドブを直感的に操作できる大型ドブの作例に倣って水平に取り付け姿勢がきつい、不可C*
楽な姿勢でアイピースを覗ける少し上向きに接眼部を取り付ける22.5°上向きに取り付け、非常に快適、効果絶大S

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

8. トップケージ

詳細設計8. トップケージ で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画のトップケージとして以下の仕様を設定します。

総評:概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンのトップケージの仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
構造副鏡を安全に収納できることトップケージ式を採用トップケージ式で製作、有意な不具合なしA
副鏡を収納できる最低限の幅(高さ)とする幅狭トップケージとする幅(高さ)298mm、不具合なしA
たわみ光軸ズレが発生しないt=4.8mmの Birch 合板を3枚(天側)または4枚(地側)重ねて製作光軸ズレの原因はここではなかったが剛性アップのため再製作B
天側地側ともt=18mmの Baltic Birch 合板で製作剛性感が向上、不具合なしA
剛性出来るだけ高剛性(指定なし)当初光軸ズレの原因がトップケージにあると疑ったがトップケージは特に問題なかったA
扱いやすさ脚立なしで組み立て可能(指定なし)立つ位置を工夫すればギリギリ載せられるA
工具なしで組み立て可能6本自作トラス金具ではノブスターを使い工具レスとする工具なしだが組み立てにくいC
8本トラス金具では Aurora Precision 社の金具を使用、工具レスとする工具なし、組み立ても容易A
重量出来るだけ軽く(指定無し)8.3 kg(アイピース、ファインダー、遮光板を含まず)A
迷光対策接眼部の反対側から迷光が直接入射しない風に煽られるのを防ぐためシュラウドは使用しないシュラウドなしでも特に問題なしA
光路中に遮蔽板(バッフル)を設置する星像が面白くない、不可C
接眼部の反対側に遮蔽板(フード)を設置する強風でも特に問題なしA

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

9. 鏡筒トラス

詳細設計9. 鏡筒トラス で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の鏡筒トラスとして以下の仕様を設定します。 鏡筒トラスはその金具も含めて当初は自作しましたが、 光軸ズレの問題や振動の問題から Aurora Precision 社の金具を使用することにしました。 またトラス棒の直径も 1" から 1.5" へ太くしました。

総評:不具合は解消し、概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンの鏡筒トラスの仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
たわみ光軸ズレが発生しない直径1"、6本トラス、トラスの支点を一致させる、自作トラス金具最大8mmの光軸ズレC*
直径1"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具最大1mmの光軸ズレB
直径1.5"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具最大1mmの光軸ズレB
剛性出来るだけ高剛性直径1"、6本トラス、トラスの支点を一致させる固有振動数2.6HzC*
直径1"、6本トラス、トラス金具を高剛性に改良固有振動数3HzC*
直径1"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具固有振動数5.1HzB
直径1.5"、8本トラス、Aurora Precision 製のトラス金具固有振動数6HzA
組み立てやすさトラス本数を減らして組み立て時間を短縮6本6本トラスだとトップケージの取り付けが大変、逆に時間がかかるC*
8本トラスに仕様を変更こちらの方が組み立てやすい、満足A
調整しやすさトップケージ位置をトラス棒の長さだけで調整スチュワートプラットフォームの原理を採用調整が逆に困難C*
Aurora Precision 製のトラス金具、加工精度で合わせて調整は行わないこの仕様が正解、不具合なしA
重量出来るだけ軽く(指定無し)3.5kg(直径1"、6本トラス)A
3.2kg(直径1"、8本トラス)A
旧: 5.3kg(直径1.5"、8本トラス)B
新: 5.3kg(直径1.5"、8本トラス)B
長さ出来るだけ短く(指定無し)1571mm(直径1"、6本トラス)B
1487mm(直径1"、8本トラス)A
旧: 1498mm(直径1.5"、8本トラス)A
新: 1453mm(直径1.5"、8本トラス、主鏡交換に合わせて短縮)A
トラスの構造鏡筒のたわみを最小とする軽量化・単純化のためセルリエトラスは採用しない有意な不具合なしA
迷光対策鏡筒トラス部分で迷光を生じない風による振動発生や動鏡の暴走を防ぐためシュラウド(トラスカバー)は使用しない有意な不具合なしA

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

10. 高度軸・水平軸

詳細設計10. 高度軸・水平軸 で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画の高度軸・水平軸として以下の仕様を設定します。 高度軸・水平軸は自作することにしました。

総評:有意な不具合はなく、概ね期待通りの性能を有する。 ただし高度軸を補強すると鏡筒の固有振動数が最大で13Hzまで増加できると予想されるため、改良を検討中。

自作60cmドブソニアンの高度軸・水平軸の仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
軸受けの材質静止摩擦係数と動摩擦係数の差が小さく、値も小さい材質テフロン+FRP静止摩擦係数0.10、動摩擦係数0.093、有意な不具合なしA
軸受けの面積面積は摩擦と無関係、小さくても良い圧力2.9kg/cm2パッドが削れ、動き始めもリニアでない、不可C*
圧力が一定値以下となるよう面積も考慮する圧力1.3kg/cm2この圧力なら削れない、これで問題なしA
高度軸回転に必要な力2~4kgfとなるよう設計高度軸直径φ920mm筒先で上方向1.9kgf、下方向1.7kgf、@EL=45°これで問題なしB
高度軸の重量出来るだけ軽く(指定無し)左右で4.3kg、ただし補強に1.6kg必要、合計5.9kgA
水平軸回転に必要な力2~4kgfとなるよう設計水平軸直径φ730mm筒先で3.3kgf @EL=60°A
水平回転の出っ張りバックラッシュのないスムーズな水平回転ができる「出っ張り」をミラーボックスに取り付ける有効に機能、期待以上S

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)

11. ロッカーボックス

詳細設計11. ロッカーボックス で得られた見知と製作上の都合を総合して、自作60cmドブソニアン計画のロッカーボックスとして以下の仕様を設定します。

総評:概ね期待通りの性能を有する。

自作60cmドブソニアンのロッカーボックスの仕様
検討項目要求仕様製作仕様実測結果判定
構造高剛性な構造とする側面は4面で「ロの字」とする(コの字としない)ロの字型で製作、高い剛性感が得られたA
底面軽量化のため必要最低限とするt=4.8mmの Birch 合板を4枚貼り合わせて製作固有振動数 の測定からここの剛性不足が判明C*
剛性のため底面の板厚は重要上記にt=18mmの Baltic Birch 合板を張り付け固有振動数6.1Hz→8.2Hz、効果絶大S
高さ軽量化・高剛性のためできるだけ低く(指定なし)地上高294mm(グランドボード含む)A
重量出来るだけ軽く(指定無し)15.1 kg(底面の補強前)A
22.5 kg(補強後)
重いのは不満だが高剛性の方が重要、受容
B
望遠鏡の組み立て高度軸を取り外し可能にするための機構を主鏡セルに備える主鏡セルにジャッキを組み込むうまく機能しないC*
高度軸を取り外し可能にするための機構をロッカーボックスに備えるロッカーボックスにつっかえ棒を入れる穴を用意うまく機能、シンプルで十分機能するS

判定基準 S: 期待以上、A: 概ね期待通り、B: 仕様を満たさないが受容可能、C: 再設計・再製作が必要(* は仕様そのものが適切ではなかった項目)